複雑化する企業の諸問題に、広報はどう立ち向かうべきか。リスクマネジメントを専門とする弁護士・浅見隆行氏が最新のケーススタディを取り上げて解説する。
問題の経緯
2019年11月15日

セブン-イレブン・ジャパン本社1階にある店舗(東京・千代田)。
セブン-イレブン・ジャパンのフランチャイズ加盟店で、店舗経営指導員(OFC=オペレーション・フィールド・カウンセラー)の2人が店舗に無断で商品の発注をしていた問題。2019年11月15日、経済産業省で開催された第2回「コンビニ本部ヒアリング」では、永松文彦社長がOFCの2人を懲戒処分としたことを発表した。11月27日には、無断発注の実態調査をするため、約1カ月間限定で社員向けに無断発注専用の通報窓口を設置した。
セブン-イレブン・ジャパンの永松文彦社長は2019年11月15日、経済産業省で開催された第2回「コンビニ本部ヒアリング」で、フランチャイズ加盟店を巡回する店舗経営指導員(OFC=オペレーション・フィールド・カウンセラー)2人を、店舗に無断で商品の発注をしたことを理由に懲戒処分としたことを明らかにしました。
今回はこの件を題材にして、社内処分に関わる危機管理広報を解説します。
連日の報道で崩れる信頼
セブン-イレブン・ジャパンは本件に関して、記者会見を実施したり、プレスリリースを発信したりはしていません。
一般論で言えば、社内の不祥事で刑事・行政事件や民事訴訟に発展することなく当該従業員の懲戒処分だけで済むケースは、対外的に公表する必要はありません。一方で、懲戒事由が社内の規則違反に留まらず法令違反である場合や、関係者が社外にも及ぶ場合には、対外的に公表することで世の中からの信頼回復を図る必要が出てきます。
今回、OFCの2人が行った無断発注は同社の就業規則に違反する行為です。しかし同時に、被害を受けた取引先として、無断発注によって余計なコストを負担させられた店舗オーナーが存在します。そうなると、社外にも関係者がいるため、懲戒処分だけして広報をせずに済ますのはふさわしくないとも判断できます …