記者がスクープを出す直前にかける確認電話。この電話を受けた広報は、認めるべきか、煙に巻くべきか。メリット・デメリットを知り、適切な対応を選択する必要がある。
年末が近づくとマスコミ業界も忙しくなる。正月向け特集記事の準備に加え、企業の合併交渉や政府予算案の決定など年内決着を予定している案件の締め切りが迫ってくるからだ。広報担当者も同様に緊張を強いられる時期ではないだろうか。
そんな時期、記者から深夜にかかってくる電話は嫌なものに違いない。翌日の朝刊にスクープ記事を入れるという「最終確認」の電話かもしれないからだ。
記者はスクープを出すとき、直前に広報や企業トップに電話することが多い。情報が漏れて他社に追いつかれるのを防ぐため、新聞社なら最終版の締め切り直前に「当てる」のが普通だ。駄目押しの確認をしたり、不祥事系のニュースなら当事者としてのコメントを求めたりするのである。
こうした電話がかかってきたとき、認めるのかごまかすのかは悩ましい問題だろう。実際、広報向けセミナーの後に、こっそり質問されることがある。もちろんケースバイケースなので模範回答はないのだが、いざというときに備えて選択肢とそれぞれのメリット・デメリットは押さえておく必要がある。
「ノーコメント」には要注意
記者が締め切り直前に電話をかけるのは、すでに裏取りは済ませて記事の掲載も決まっているケースと、予定稿は用意しているものの確信が持てていないケースに分けられる。
どちらの状態なのか電話口で判断するには経験が必要だ。後者でも、記者はすべてを知っているかのような口ぶりでカマをかけることがあるからだ。トップ人事なら「◯◯さんが社長に昇格されるそうですね。明日の朝刊で打たせてもらいます」といった感じだ。本当は詰め切れていないのだが、相手が「知られてしまったなら仕方がない」と認めるのを期待しているわけだ。
もっとも、私の経験から言えば、こんな安っぽい手に引っかかる人はほとんどいない。こういう取材を繰り返していると相手の信頼を失うので、後輩には勧めなかった。ただ、この手のブラフ(はったり)も成功確率がゼロというわけではない。例えば社長に内定した本人に当ててもごまかされるので、家で待っている妻に電話して「おめでとうございます!」と言ったら、「ありがとうございます」とあっさり認めたという武勇伝を聞いたことがある。
それはともかく、広報としては落ち着いてやり取りする中で、相手が本当に証拠を握っているのか確かめるしかない …