複雑化する企業の諸問題に、広報はどう立ち向かうべきか。リスクマネジメントを専門とする弁護士・浅見隆行氏が最新のケーススタディを取り上げて解説する。
問題の経緯
2019年9月27日

大阪市北区の関西電力本店。
毎日新聞朝刊のスクープを受けて、関西電力は大阪市内で記者会見を開催。同社の八木誠会長や岩根茂樹社長ら20人が、2011年~2018年の間に計3億2000万円相当の金品を受領していたことを発表した。同社は10月9日には臨時取締役会を開き、八木会長と岩根社長の辞任を決定した。
2019年9月27日、関西電力の八木誠会長・岩根茂樹社長ら20人が、高浜原発がある福井県高浜町の元助役・森山栄治氏(故人)から計3億2000万円相当の金品を受け取っていたことが明らかとなりました。10月9日には八木会長、岩根社長らが辞任を発表。当初2人は辞任を否定していましたが、多額の金品の受け取りに対する世の中の批判が大きく、辞任に追い込まれた格好です。
今回は、この関西電力のケースを題材に、役員の不祥事が発生した際の危機管理広報を解説します。
違法でなくても事実を公表すべき
9月27日に行われた記者会見は、関西電力が本件に関する社内調査を終えてから1年以上が経過したタイミングでした。国税局の税務調査で、2011年から2018年にかけて、森山氏が八木会長や岩根社長らにお中元・お歳暮・社長就任祝いなどの名目で、現金やスーツを渡した事実が発覚したのです。その資金は、高浜原発や大飯原発の工事を請け負う建設会社が森山氏に工事受注の手数料として支払った約3億円である可能性がありました。
同社はこの税務調査を受けて、2018年7月から9月までの期間、調査委員会による調査を行いました。この際、約3億2000万円を受領した事実を認める調査報告書も作成していました。ところが、その時点では事実を公表しなかったのです。
岩根社長は当時事実を公表しなかった理由について、「工事の発注プロセスは適当だった …