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本田哲也のGlobal Topics

PR先進国に追いつけ!人材教育の進化が課題

本田哲也

早いもので、2019年も年の瀬が近づいてきた。そして実は本コラムも、今回で最終回を迎える。連載が始まったのが2014年からなので、実に丸6年間のご愛読をいただいたことになる。

「読者の皆さんにもっと海外の情報もお届けしていきたい!」という広報会議編集部の熱き思いから、外資PR会社代表であった僕に白羽の矢がたったというわけだが、(気軽に引き受けた身としては)まさか6年も続くとは思っていなかった。

毎年恒例のコンテンツとなった「これが世界を動かすPR会社だ!」という世界のPR会社ランキングをはじめ、海外PR事例からトレンドニュースまで雑多ではあったが、少しでも読者の皆さんの一助になっていれば続けた甲斐もある。

優秀な人材の行動特性を分析

僕自身、グローバルPRグループに20年間所属し、日本と海外の違いについては多くの見識を持つことができた。はっきりいって、PR先進国である欧米に比べ、日本はまだまだ遅れている。一方、テクノロジーやSNSの浸透でPRや広報のあり方が世界的に見直される中、日本特有のポテンシャルもあるように思える。

その中で明らかに日本が今後力を入れるべきことがある。この領域における「教育」だ。

PR発祥の地である米国では、1950年代には92の主要教育機関でPR講座が持たれ、14の大学で専攻科目が設置された。このようにアメリカや欧州にあって、明確に日本に存在しないもの。それが「PRコンピテンシーモデル」である。

コンピテンシー(competency)とはそもそも、その領域で高いパフォーマンスを上げている人材の行動特性を分析し、要件として体系化することで、人材育成に活用されている。

「優秀といわれるプログラマーはなぜ成果を出せるのか」。その行動特性が分かれば、それを使ってより多くの優秀なプログラマーを育成できる、というわけだ。

欧米には、このPRパーソン版がある。例えば、米国PR協会であるPRSAでは、「Communication models and theories」「Ethics and law」「Using information technology efficiently」など、計10件の具体的な要件領域をPRプロフェッショナルのコンピテンシーとして定めているし、ヨーロッパではPR領域のアカデミアによる「ECOPSI」というプロジェクトが、「Communication Role Matrix」というコンピテンシーモデルを発表しているのだ。

スキル向上の根拠を探る

ここで重要なことは、「プレスリリースが書ける」といった、現場作業におけるスキルの話ではない。高度なプレスリリースが書けるというのは、ある種の結果論であるからだ。「なぜこの人は上手にプレスリリースが書けるのか」という根拠特性こそがコンピテンシーなのだ。

日本にこれから必要なのは、日本独自のPRコンピテンシーモデル。これは今後日本の広報PR教育が進化するためにも不可欠だろう。

最後に謝辞を。代々の編集部ご担当者の皆さま、リサーチなどでアシストしていただいた皆さま、そして長い間お付き合いいただいた読者の皆さま。本当にありがとうございました。またどこかでお会いしましょう!

本田哲也(ほんだ・てつや)

本田事務所代表/PRストラテジスト。PRWeek誌「世界でもっとも影響力のあるPRプロフェッショナル300人」に選出された日本を代表するPR専門家。『戦略PR 世の中を動かす新しい6つの法則』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)などの著作、講演実績多数。海外での活動も多岐にわたり、世界最大の広告祭カンヌライオンズの公式スピーカーや審査員を務めている。

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