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コーポレートブランディングカンファレンス

目標は「グローバル・メジャー・ブランド」 国内でも認知向上からファン獲得へ

クボタ

グローバル化が加速するなかでクボタはブランド方針の一本化を進めている。これまで「企業広報賞」や「日経広告賞」で大賞を受賞するなど、社外からの評価も高い同社のコーポレートブランディングの取り組みを紹介した。

毎年1月に京都国際会館で、国内外の農機・建機ディーラーへ向けて経営方針の発表会を実施。

120カ国以上に事業を展開し、海外売上比率が7割に迫るクボタ。グローバル化が加速する同社のコーポレートブランディングについて、コーポレート・コミュニケーション部長を務める細谷祥久氏が語った。

1890年に創業した同社のルーツは、鋳物の製造。現在は農機や建機、エンジンといった機械と、パイプシステムや水処理機器などの水・環境の主要製品を擁している。日本と北米、欧州、アジアに拠点を構え、2018年12月期の1兆8500億円という売上高の内訳では、北米の売上が日本を上回るなど急速にグローバル化が進んでいる。

創業120周年が過ぎた2012年には、「クボタ・グローバルアイデンティティ」という世界共通の経営理念や「For Earth,For Life」というブランドステートメントを制定。「食・水・環境という、人類の生存に欠かせない分野での課題解決を経営理念の中核に据えて事業を展開している」と両方の制定に関わった細谷氏は語る。

グローバルでブランド体系化へ

世界規模での事業拡大とともに、SDGs(持続可能な開発目標)を経営の羅針盤としてグローバルの方針やスローガンに一貫性を持たせた。

また、経営の中長期目標として、「グローバル・メジャー・ブランド(GMB)」を掲げ、売上や利益だけではなく「最も多くのお客さまから信頼されることによって、最も多くの社会貢献をなしうる企業(ブランド)」になることを目指す。現在は、木股昌俊代表取締役社長が2018年に表明した「元気クボタの強力発信」という経営方針をもとに、統率性と一貫性を追求しながら、戦略性に富むコミュニケーション活動を展開している。

コーポレートブランディングで目指すのも、全社的かつ体系的であり、グローバルで一貫性を持たせること。重点推進課題として、❶ブランドアイデンティティの構築 ❷ブランドマネジメントの強化 ❸国内ブランド強化プロジェクトの継続 ❹周年事業によるコーポレートブランディングの4点を挙げている。

❶では、急速な事業のグローバル化から生まれた歪みとダブルスタンダード(二重基準)の是正を狙う。「今までは各地域や各事業が独自でマーケティングやブランディングを展開してきたことで個別最適が進み、一貫性に乏しいブランドになっていた」と細谷氏。

一例として挙げたのが、ロゴとカラーだ。30年以上にわたりコーポレートロゴとプロダクトロゴが併存。事業戦略でのプロダクトカラー(オレンジ)と、会社の象徴ともいえるコーポレートカラー(ブルー)をどのように位置づけて運用していくかなどの課題も抱えていた。現在はブランドデザインガイドラインを刷新し、ロゴの統一化を推進している。「今後もグローバルを俯瞰しながら、ブランドの体系化を目指していきたい」と語る。

❷はブランド管理ルールの曖昧性、関連部門との希薄な連携性を反省しての改善だ。「問題を打破すべく、ブランドビジョンの策定を検討するほかに、法務、知財、品質保証、デザインといった関係部門と連携しながらブランド管理の方針とルールの策定を進めている」と細谷氏。さらにコーポレート・コミュニケーション部でも、これまで以上に全社的にアドバイザーとしての役割を発揮しようと、ブランドセミナーを定期的に主催している。

広告で25年ぶりにタレント起用

グローバル化が進むなかで、❸の国内への発信も重要視。2017年1月から計画を3段階に分け、「ブランド強化プロジェクト」をスタートさせた。

2017年からの2年間は、認知向上期というフェーズ1にあたる時期。若年層を主なターゲットとして社名の浸透や好感度の向上を図った。2019年からは、ファン獲得期とするフェーズ2に移行。一般生活者層に向け、同社の事業や存在意義の理解につながるメッセージを展開している。2021年から予定するフェーズ3は、現在検討中だ。

またこれに準じて、2017年から25年ぶりとなるブランドパートナーとして女優の長澤まさみを起用。「壁がある。だから、行く。」のスローガンをメッセージとした広告をテレビやSNSで展開している。このスローガンは「食・水・環境分野の課題解決に果敢にチャレンジする私たちの姿勢を込めた言葉」と解説する。当初は広告での発信を中心に使用していた同スローガンだったが、今では社内コミュニケーションの合言葉としての広がりも見せているという。

「国内ブランド強化プロジェクトは今後も継続展開していく予定。一連の取り組みによって、実施前と比べ、広告認知や事業に対する理解、好感度など主要なKPI指標は上昇基調にある」と手応えを口にした。

2020年は、創業130周年という節目。❹については現在企画中で、「まだ発表こそできないが、関連部門が連携して長期ビジョンでの検討を進めている」と話した。

2017年からブランドパートナーに長澤まさみを迎え、テレビCM、SNS、交通広告など幅広く展開。

ドラマと連動した広報活動

同社はコミュニケーション活動への評価として、2019年に経済広報センターが主催する第35回「企業広報賞」で大賞を受賞している。

選考では、2018年にTBSで放映されたテレビドラマ『下町ロケット』を通じた、全社一体となった広報活動による日本農業の活性化への貢献が評価された。池井戸潤氏による原作小説の執筆時から協力し、ドラマでも自動運転農機の提供、技術指導、セリフ台本の監修をした。さらに1400人の社員が、早朝や休日にエキストラ出演もしている。「日本農業への活性化への貢献事業、自動運転農機といった最新のトレンドを、ドラマを介して訴求できた」と細谷氏は振り返る。

「自分たちの事業がドラマを通じて世間に認知され、社内ブランディングの観点からも士気が上がるなど、副次的効果も多く生まれた。報道機関向けの試乗実演会は、記者に実際に自動運転農機に乗ってもらうことでドラマと報道の連鎖をつくり出した。社内報で裏側を紹介することで社員がドラマと自社の関わりも共有できた」。

さらに、劇中に登場した自動運転トラクターを、CMで使用したりドラマ最終回翌日の全国紙朝刊の広告にも登場させたりと連動した企画も実現した。

2018年には第67回「日経広告賞」で大賞も受賞している。「一連の取り組みに嬉しい評価をいただいている。これからも情報発信に力を入れながら、社会から真に信頼される企業像をつくっていきたい」と語った。

ドラマ『下町ロケット』(TBS)には社員がエキストラとして参加。社内報でもその裏側やインタビュー、制作秘話などを紹介した。

クボタ 理事
コーポレート・コミュニケーション部長
細谷祥久(ほそたに・よしひさ)氏

1988年久保田鉄工(現クボタ)入社。広報室、東京本社総務部、人事労政部を経て、2003年人事部人事グループ長、2004年秘書広報部広報室長、2010年から現職。メディアリレーション、インターナルコミュニケーション、デジタルコミュニケーション(ウェブ・SNS)、コーポレートブランディングなどを統括。

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