空間づくりのプロセスを一貫してサポートする丹青社は10月10日、「空間デザインで訴求する企業文化」と題したセミナーを開催した。当日は各企業の具体的な事例とともに企業のファンを増やす空間づくりを解説した。
第1部は「ニコンにおけるコーポレートブランディングの取り組み」をテーマに、ニコン 経営戦略本部 コーポレートコミュニケーション部長の豊田陽介氏が登壇した。2017年に100周年を迎えた同社。カメラメーカーとして広く知られる一方で、それ以外に幅広く展開している事業が認知されていないこと、社内におけるブランド価値の認識にバラつきがあることが課題だ。
「ブランドの価値を高めるためには認知してもらい、信頼され、愛着を持ってもらうという3ステップが重要です」と豊田氏。ニコンでは、ブランド価値の正しい認知と、社内も一枚岩のように一体になれるよう、コミュニケーション施策を再検討。「信頼と創造」という企業理念をもとにニコンのありたい姿を一貫したデザインに集約して明確化し、社内外でのコミュニケーションを一本化する取り組みを始めた。
空間デザインに関しても事例をいくつか紹介。2015年10月にオープンした「ニコンミュージアム」(東京・品川)や新製品の発表会、自社ギャラリーでの著名なフォトグラファーの写真展などでも空間づくりに注力した。「メディアで取り上げていただく機会にもつながった。写真の力、撮影の楽しみなどニコンが提供する感動の体験を空間表現でつくり出すことで、ブランド価値向上にも寄与している」と語った。
心を動かす仕掛けを空間から
第2部では、丹青社 デザインセンター エグゼクティブ クリエイティブディレクターの洪恒夫氏が登壇。空間コミュニケーションに長年従事してきた経験から、空間を活用したコーポレートブランディングのポイントについて解説した。
「訴求力の高い施設を目指すには、施設のフィロソフィーをしっかり定めることが重要です」と洪氏。「発信したい企業イメージや市場のニーズを洗い出し明確な目的を持たせることができれば、その後に構想すべき、ターゲットやベネフィット、具体的な表現方法はおのずと決まってくる」と説明した。
また空間デザインの最近の傾向として「情報から実感(リアリティ)が重要視されている」と主張。感覚の面からも心を動かす空間をつくり上げることが求められていると述べた。
第3部では、丹青社の洪氏、ニコンの豊田氏に加えて味の素AGF 広報部長の杉山統氏も参加し、パネルディスカッションを実施した。
味の素AGFは2015年10月に味の素の100%子会社となり、味の素AGFという企業の価値を見出すコーポレートブランディングが急務とされた。そこで掲げた企業スローガンは「いつでも、ふぅ。」。企業理念をもとに、徳之島での国産コーヒー栽培、「AGF『ブレンディ』器の絆プロジェクト」という復興支援を兼ねた工場見学など、接点を広げるコミュニケーションに力を入れている。
「新たにコーポレートブランディングに取り組むなかで、活動すべてにユーザーが共感できるかを意識しています」と杉山氏。
"ユーザー目線での見直し"は空間デザインにおいても重要だと洪氏も指摘している。「ユーザーが驚き、発見し、共感し、納得できる空間であるか。この4つの評価軸で冷静に見つめ直すことが、社内外のファンを拡大する空間づくりにつながる」と締めくくった。
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