新聞や雑誌などのメディアに頻出の企業・商品のリリースについて、配信元企業に取材し、その広報戦略やリリースづくりの実践ノウハウをPRコンサルタント・井上岳久氏が分析・解説します。
テレビなどで「うんこミュージアム」の名前を聞いてギョッとなった人もいるのではないでしょうか。
実は私もそのひとりです。今回の取材のために息子を連れて行ったところ、入り口で待っている段階で中から「うんこー」「うんこー」と叫ぶ声が聞こえてきます。
入場すると我々もまず、その3文字を叫ばされ、続いて便器に座るとカラフルな「マイうんこ」が出てきました。それを手に持って館内を歩き、様々なゲームや買い物を楽しむという趣向。
誘ったときは「そんなところへ行くのは嫌だ」と言っていた息子も意外と楽しんでおり、お土産のうんこグッズは家族にも好評でした。
うんこミュージアムが最初にオープンしたのは2019年3月。場所はアカツキライブエンターテインメントが運営する横浜駅東口の「アソビル」。ビル全体が「モノ」でなく「コト」体験ができる企画を期間限定で展開していくコンセプトです。
同社がアソビルを始めるにあたり、鎌倉を拠点にユニークな事業を展開している面白法人カヤックに声をかけたところ、提案されたのがうんこミュージアムでした。
カヤックは他社の「うんこドリル」がヒットする以前から「うんこ演算」などのコンテンツを運営してきた「うんこのリーディングカンパニー」を自任しており、リアル業態にも拡大したいと考えていました。うんこは世界中の人が知っていて、誰もが関心のある最強のIP(知的財産)だというのがカヤックの持論です。
ターゲット設定は若年層女性
とはいえキワモノ感の強いコンテンツ。「本来なら、どこかの段階で待ったがかかりそうですが、企画書を見た当社の代表取締役CEOも『これは面白い』とすぐにOKを出しました。2社の企業風土が近く、相性がよかったのだと思います」と、アカツキのASOBUILD事業部広報である田代絢美さん。
ただ、そのままではただの下ネタで広い層に受け入れられるものではないため、若い女性たちに好まれるよう、「カワイイ」に舵を切ることにしました。
館内のコンテンツを考えるにあたり、事業部のメンバーはアメリカ・ロサンゼルスの体験型施設を視察。日本人はアメリカ人と比べて能動的に参加することが苦手なため、没入して参加してもらうためには入り口の仕掛けやテーマ音楽が必要なことなど、様々なノウハウを学び、落とし込んだようです。
「クソゲーコーナー」では、うんこをサッカーボールの代わりにシュートするなどのオリジナルゲームを開発。「世界のうんこグッズ」コーナーでは有名なジャコウネコの糞から取り出したコーヒー豆やボードゲームなどを紹介。世界中に、こんなにもうんこグッズがあるとは思いませんでした。
うんこのお土産を買えるコーナーでは、触って楽しむ「スクイーズ」やグミ、Tシャツなどのオリジナル商品を販売しており、一番人気は公式キャラクターである「ウンベルト」をデザインしたクッキーだそうです。
こうした趣向を凝らした結果、横浜では今年3月15日のオープンから6カ月で入場者数は20万人と、予想の2倍を記録。当初、7月末までだった会期も9月末まで延長しました。
カラフルでキラキラしたうんこと一緒に写真が撮れる「ウンスタジェニックエリア」などを用意し、狙い通り若い女性にも好評のようです。
同社では広報もうんこミュージアムの運営チームに属しているので、開発と同時進行で情報収集できます …