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実践!プレスリリース道場

日本人が好む香りとは?認識を覆す情報を発信するプレスリリース活用

井上岳久(井上戦略PRコンサルティング事務所・代表)

新聞や雑誌などのメディアに頻出の企業・商品のリリースについて、配信元企業に取材し、その広報戦略やリリースづくりの実践ノウハウをPRコンサルタント・井上岳久氏が分析・解説します。

日本人はあまり香水好きでない民族と言われ、香水の匂いが強すぎると「香害」などとも言われます。

そんな我が国においてリピート率80%以上、10年間ずっと右肩上がりの成長を続けている「アクアシャボン」という商品があるのをご存じですか?今回はこのヒット商品を展開するウエニ貿易のリリースに注目します。

同社執行役員コスメティック事業部統括部長の小渕清次さんがアクアシャボンの開発を始めたのは2007年ごろのこと。ウエニ貿易は社名の通り、海外商品を輸入して日本代理店になるとともに、独自商品の開発もしています。

営業部員にして開発も手がけていた小渕さんは当時、ロフトの商品部から「これからはブランドものの香水とアロマの中間に位置する商品が売れると思うが、何か考えはないか」と聞かれました。ジバンシイのプチサンボンなど、海外でせっけんの香りの商品に人気があり、バイヤーの感触もよかったため、小渕さんはすぐに「せっけんの香りがする香水」の開発に着手します。

最初に着手したのは部下の女性社員とともに、当時出回っていたボディソープやシャンプーをかき集めること。先入観が入らないようラベルのない小瓶に移し替え、テイスティングを繰り返し、どういう方向性の香りでいくかを決めていきました。

難しいのは、せっけんそのものだと工業系の独特なニオイがしてしまうこと。また当時は、香水といえば丸みのあるボトルがもてはやされていたのを、あえて縦長の流線型デザインにすることで差別化。ボトルの中にガラス玉を入れ、振ると軽い音がすることで、せっけんの清涼感を演出しました。

せっけん人気を裏づける材料

香りの名称はお洒落にしすぎず、「ホワイトコットンの香り」など素直に感じた印象をつけました。今ではストレートな商品名がもてはやされていますが、当時には珍しく、「せっけんの香り」という素朴さをあらゆる方面から打ち出しました。こうして2年間の開発期間を経て、2009年に発売にこぎつけたのです。

いざ発売すると、アクアシャボンは予想をはるかに上回る売れ行きをみせます。年間の想定売上本数を3カ月で売り切り、半年の欠品期間を経て復活。バイヤーの間では取り合いになり、OEM業者も自社でリスクを背負い多めに自発的に生産するようになったといいます。そして、香り市場に「ライトフレグランス」という新たな分野を生み出すまでに至ったのです。

「ずっと無香料の時代が続いていたのが、ちょうどそのころにP&Gのダウニーなど海外の強烈な香りの柔軟剤に人気が出たりして、タイミングが合ったんでしょうね。私はラッキー商材だと思っています」と小渕さんは謙遜しますが、当時は戦略的なPRを行わず、店頭での展開だけでここまで売れたのです。PR展開をしていたらもっとすごいことになっただろうなと思わずにいられません。

発売から10年を迎えた今年、小渕さんたちは満を持してPRを展開することにしました。同社では事業部ごとにPR担当者がおり、今回指揮したのはコスメティック事業部PRマネージャーの昆沙賀泰丈さんです。

単に「10周年」ということでリリースを配信する企業もありますが、世に無数の商品がある中で、何かしら付加情報がなければメディアの目に留まることはできません。そこで「一般的に香水文化が定着しないといわれている日本でも、せっけんの香りは愛されている」という新たな"気づき"を盛り込んだ啓蒙啓発型のリリースをつくることにしました。ここからは実際のリリースを見ていきましょう。

まず、タイトルで「香水が定着しないというイメージは間違い」と断定。(ポイント1)世の中の認識を覆すことで、メディアの関心を集めています。いつもお伝えしていることですが、タイトルは読み手の心をつかむ部分。自分が記者だったら、どんなタイトルなら先を読みたくなるかを考えてつくることが大切です。



本文は充実の内容です。まず「日本人がせっけんの香りを好む理由」を香りの専門家2人が学術的に分析。それを実証するような、民間企業が調査したアンケート結果も掲載しています …

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