複雑化する企業の諸問題に、広報はどう立ち向かうべきか。リスクマネジメントを専門とする弁護士・浅見隆行氏が最新のケーススタディを取り上げて解説する。
問題の経緯
2019年7月31日
かんぽ生命保険の不適切販売に関して、かんぽ生命、日本郵政、日本郵便の各社長が共同で謝罪会見を実施した。ことの発端は、かんぽ生命とその販売委託先の郵便局(日本郵便)で、旧契約から新しい契約への「乗り換え」時の不適切な販売が明らかになったことだった。その後、郵便局員への過剰なノルマの存在、保険料の二重徴収・無保険が約10万件に達していたことなども発覚し、各社のガバナンスの機能不全も指摘された。
2019年6月以来、日本郵政とかんぽ生命保険の株価の下落が止まりません。7月31日にはかんぽ生命、日本郵政、日本郵便の各社長が共同で記者会見を行いましたが、これに対する批判の声も散見されました。
今回はこの騒動を題材に、組織的な不祥事が発覚した後の危機管理広報について検討します。
違法性が発覚した時点で危機管理対応を
かんぽ生命や日本郵便による保険の不適切販売が全国的に報じられるようになったきっかけは、6月24日付の共同通信社の記事でした。ただ、一連の問題が最初に報じられたのは、その前年の8月。西日本新聞社に、郵便局員からかもめ~る(暑中・残暑見舞い用ハガキ)の販売ノルマを告発する1通のメールが届き、同紙でそれを報じたのです。これを機に、同社には続々と告発が寄せられました。
2019年3月18日には、保険の不適切販売や金融庁への保険業法違反の届出の実数、社内資料についても報じました。
ノルマの存在は社内の問題なので、その内容が違法な販売方法を強いるようなものでない限りは、対外的な広報が必要とまでは言えません。しかし、3月の報道内容は、数年にわたって複数件もの保険業法違反が疑われる営業活動の存在を指摘するものでした。かんぽ生命や日本郵政、日本郵便のガバナンス体制、すなわち、社内で不正が発生しないように監視監督、モニタリングする体制が機能していないことや、コンプライアンスが浸透していないことを取り上げた報道です。
だとすると...