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記者の行動原理を読む広報術

会見の生中継で変わる記者の行動 企業は透明性を重視した発信を

松林 薫(ジャーナリスト)

近年、注目度の高い記者会見の完全生中継が定番化している。記者は存在感を示すために独自ネタを暴露することもあり、自社に都合の悪い情報を隠すことは難しくなった。

吉本興業のタレントが詐欺グループのパーティーなどに参加した問題は、2019年7月20日に雨上がり決死隊の宮迫博之とロンドンブーツ1号2号の田村亮が、2人で記者会見を開いたことをきっかけに、大きな議論を生んでいる。

岡本昭彦社長が同月22日に会見を行ったことで、芸能事務所の雇用契約をめぐる議論にまで発展。意外な広がりを見せている。実は「記者会見の変質」も、それと並んで一連の騒動が浮き彫りにした問題のひとつだ。

今回は、不祥事会見がインターネットで完全生中継されることで、メディアの姿勢がどう変わっていくのかについて考えてみよう。

従来は必要な情報を集める場

従来の会見は、記者が読者・視聴者に代わって当事者に話を聞く場だった。ところが近年はインターネットで冒頭から終わりまで生中継され、終了後はアーカイブで視聴できるケースが増えた。全文の書き起こしも当日中にアップされる。こうなると、記者にとっての会見の意味も変わってくる。端的に言えば「自分の活躍を見せる場」になりつつあるのだ。

会見は長らく、記者クラブを中心とする閉じたサークル内のイベントだった。もちろんテレビの生中継は昔からあるし、「公開の場」と位置付けられていたことも事実だ。しかし現実には番組の「尺」の関係上、中継時間には限りがある。記事やニュース番組で引用される発言も、ほんの一部でしかない。やりとりの大半は、一般市民の目に触れなかったのだ。

こうした時代には、記者にとって会見とは「原稿を書くのに必要な情報を集める場」でしかなかった。不祥事会見も、謝罪の言葉など記事に引用できるコメントをとり、細かい事実関係を確認する地味な仕事だった。その中には、登壇者をあえて怒らせて本音を引き出すようなテクニックを用いることも含まれていた。

求められるのはスター記者

ところが、会見者とのやりとりがすべて公開されるようになると、記者も一般の人に見られていることを意識せざるを得なくなった。本音を引き出すためだったとしても、高圧的な態度で質問すればネットで炎上する。専門的な質問をして重要な事実を聞き出しても、背景を知らない人からは「無意味なことしか聞いていない」と批判される。実際、元同僚らも「やりにくくなった」とぼやいている …

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