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実践!プレスリリース道場

新卒エントリー増加に貢献 地元メディアを誘致したリリース

井上岳久(井上戦略PRコンサルティング事務所・代表)

新聞や雑誌などのメディアに頻出の企業・商品のリリースについて、配信元企業に取材し、その広報戦略やリリースづくりの実践ノウハウをPRコンサルタント・井上岳久氏が分析・解説します。

近年、飲食業界と並び深刻な人手不足となっているのが、建設業界です。厚生労働省の調査データによれば、建設業界では就業3年以内の離職率が大卒で30.5%、高卒に至っては47.7%と、ただごとではありません。

雇用主は有能な人材を確保するとともに、入社した社員たちが辞めないようアフターケアもしなければならず、細部まで気を配る必要があります。今回は商品などの売れ行きが目的ではなく、人材確保を目的としたプレスリリースを見ていきたいと思います。

取り上げるのは、大分市の坂井建設。1961年に創業し、代表取締役(取材当時)の坂井泰久さんは2代目です。不動産、新築、リフォームをワンストップで手がける「デパートのような工務店」を標榜するだけでなく、近年は介護事業やIT関連事業にも乗り出し、新入社員も積極的に採用しています。

従業員数は全体で70人程度ながら、直近では10人程度の新卒を採用していることからも勢いが分かります。坂井さんはPRに対しても熱心で、大分からわざわざ私のPR講座にも参加してくれました。たびたび成果報告をいただいた中で、特におもしろいと思ったのがこの「サプライズ入社式」でした。

入社式には家族を同伴

同社では6年前から、家族同伴の入社式を実施しています。社会への巣立ちを家族に見守ってもらうことで、新入社員に自立への自覚を持ってもらうことが狙いです。それとともに、ご家族に良質な企業だと知ってもらい、離職者を減らす狙いもあると思われます。

入社式のプログラムには「感謝レター」というサプライズコーナーがあります。新入社員が親に対して、今までの感謝の気持ちやこれからの人生についてしたためた手紙を読み上げるもので、涙、涙の大変感動的なシーンになるそうです。

新入社員の人柄を先輩社員たちに知ってもらう意味でも、なかなかよい企画ではないでしょうか。昨年も「感謝レター」を実施してメディアに取り上げられたので、今年はより力を入れてリリースを配信し、入社式当日のメディア取材の呼び込みを図りました。2月13日の基本リリースと、3月19日のメディア誘導リリースの2本を配信しています。

ではそのリリースを見てみましょう。

(ポイント1)リリースには3カ所、目を引くポイントが設けられ、一目見ただけで瞬時に内容が分かるようになっています。タイトルで「サプライズ入社式」があること、小見出しで「感謝レター」という手紙を読み上げる内容であることを端的に伝えています。さらに前年度の写真を掲載して「涙を流すシーン」が見られることを紹介。皆さんがもし報道関係者だったら、これだけで十分に取材したい気持ちになるのではないでしょうか。



1回目の基本リリースには、2枚目に参考資料がついていました。これを読むと、(ポイント2)なぜ同社がサプライズ入社式を実施しているのか、建設業界の人手不足がいかに深刻かがよく分かり、納得感があります。

本格的に新卒採用を始めた2014年からの入社人数と定着率を表組みにしたものを載せています。例えば、2017年の入社人数は1人ですが辞めてしまったらしく、定着率は0%。

本音をいえば、過去の失敗には触れたくないものですが、それも正直に掲載している点が公明正大です。その上で入社3年以内の離職率が4.2%にとどまっていると示すことで、マイナス要素をプラスに転じさせてすらいます。実際、今の建設業界にあってこの数字は驚異的といえます …

あと62%

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