オウンドメディアを中心に据えた オムロンのデジタルメディア改革
オムロンは2017年にデジタルコミュニケーション部を設立し、オウンドメディアを中心に社内外をつなぐエコシステムを構築した。コミュニケーション効果を上げる戦略と制作の工夫を探る。
クリエイティブ力で広報は強くなる
「住みたい街ランキング」で圏外となるなど、課題を抱える東京都日野市。まずは職員の“ワクワク”を醸成しようと、ユニークな職員手帳を制作した。2019年5月には書籍化し、重版も決定した本書はなぜ生まれたのか。
2019年2月、日野市は約3000人の職員全員に『絶対に人に見せてはいけない職員手帳』を配布した。中を開くと、予定を書き込めるようないわゆる手帳ではなく、日野市の魅力を広めるためのQ&A集のようになっている。
タイトルは「見せてはいけないと言われると、ついつい見せたくなる」という人間の心理を狙ってつけたもの。むしろ、「この手帳を使って市の魅力を発信してほしい」という想いが込められているのだ。
制作を手がけたのは、2017年に有志で立ち上げた「日野の魅力発見職員プロジェクトチーム」の9人。メンバーは、広報やシティプロモーション担当の職員を軸に構成し、他部門の職員にも声をかけた。
プロジェクト始動のきっかけは、SUUMO(リクルート住まいカンパニー)の「住みたい街ランキング(関東版)」。2017年に100位までのランキングが公開されるようになったため(それ以前は30位まで)、ランクインを期待して確認したところ、日野市はまさかの圏外だった。
大島康二企画部長は「この結果はショックでした。日野市は、転入と転出の差によって生じる人口の増加を示す"社会増"が多く、住みにくい街だという印象はありませんでしたから」と振り返る。「これまで実施してきたシティプロモーションはターゲットにリーチできていないのでは」という危機感を抱き、プロジェクトチームを組んで課題解決に向けた検討を始めた。
メンバーの中でなんとなくあった共通認識が「日野市の魅力を発信するための"何か"をつくる」ということ。そこで...