取材の際の発言を真意とは違った形で報道された経験はないだろうか。それが記者のコミュニケーション能力不足にある場合、広報担当から記者への積極的な働きかけが必要だ。
企業経営者の集まりなどで新聞社にいたと自己紹介すると、マスコミに取材を受けた際の愚痴を聞かされることがある。中でも多いのが「自分のコメントが意図と異なるニュアンスで引用された」「質問が要領を得ないので不安になった」といった苦言だ。残念ながら、こうしたケースは増えている印象がある。今回は問題のある記者への対処法について考えてみよう。
そもそも報道は多様で複雑な現実から重要な部分を切り取って伝える作業だ。ありのままの姿では本質が見えにくいので、枝葉を落として「幹」だけ浮かび上がらせるのである。その意味で報道とはフレーミングという印象操作の側面を宿命的に帯びているとも言える。広報はこの点を踏まえて戦略・戦術を練らなければならないだろう。
その際、「何が本質か」については解釈の問題なので、広報と記者で見解が食い違うことがある。日本では報道の自由が認められているので、解釈を思い通りに変えさせることはできない。広報にできるのは「公式見解」を示して、記事に盛り込んでもらえるよう働きかけることくらいだ。
しかしそれ以前に、明らかにコミュニケーションに難がある記者も存在する。記者が取材の途中で「つまりこういうことですよね」と念押しをしてくるものの、それがことごとく発言の真意と食い違っているようなケースだ。
取材内容の要約メールも有効
これには、2つの原因が考えられる。第一は、記者のコミュニケーション能力自体に問題がある場合だ。
マスコミの記者職は不人気になったとはいえ、入社試験の倍率はそれなりに高い。なぜそういう人が記者になれるのか不思議だが、筆者もこういうタイプはときどき目にする。推測だが、面接官は「思い込みの激しさ」と「意志の強さ」を混同したのだろう。
相手の発言を常識的に解釈しないということは、あえて評価すれば常識にとらわれずに物事を見ているということだ。思い込みが激しい性格も、取材に欠かせない「粘り強さ」につながる面がある。実際、この手の記者は日常の取材でしょっちゅうトラブルを起こす反面、ときどき大スクープを取ることがあるのだ。トラブルを繰り返せば普通は取材業務のない部署に回すのだが、早い段階で大きな成果を上げるとそれが難しくなるというわけだ。
もっとも広報からすると迷惑な話で、対応を考える必要がある。記者がメモや録音などをする「オンレコ」の取材なら、広報側も取材内容を録音しておくのは鉄則だろう …