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実践!プレスリリース道場

広報の実力が分かる「新元号」連動リリースを分析

井上岳久(井上戦略PRコンサルティング事務所・代表)

新聞や雑誌などのメディアに頻出の企業・商品のリリースについて、配信元企業に取材し、その広報戦略やリリースづくりの実践ノウハウをPRコンサルタント・井上岳久氏が分析・解説します。

「令和」にもすっかり慣れた今日このごろですが、4月1日に新元号が発表されたタイミングには多数の関連リリースが飛び交いました。

そんな中で多くのメディアが取り上げていたのが、藤田観光の新元号制定記念キャンペーンです。同社の「新宿ワシントンホテル」では、名前に「令」または「和」が入っている人は、レストランの料金を1文字につき10%割引に。日帰り温泉施設の「箱根小涌園ユネッサン」は1文字で半額、2文字で無料になるというもの。このリリースを中心に、PR業界での改元関連の動きを総括したいと思います。

同社では各施設の広報担当者がリリースをつくり、本社広報が外部の配信サービスを使って配信しています。箱根小涌園ユネッサンでは過去にもお年玉付き年賀はがきの末尾の数字によって入場無料や割引になるキャンペーンなどを積極的に実施しており、ノウハウもありました。一方、新宿ワシントンホテルでは3月にレストラン側から「改元に際して何か仕掛けたい」と声が挙がり、施設の企画課とともに内容を検討しました。

問題は、事前に新元号が分からないこと。ある予想サイトでは「安久」が有力との説も挙がっていました。そこで、施設のレストラン会員のうち名前に「安」と「久」が入る人全員がキャンペーンを利用した場合も想定して企画内容を考えたといいます。

直後の配信は時間との勝負

こうしたリリースは、元号を入れる場所を「〇〇」などにして、当日そこだけ書き換えればいい状態で準備しておきます。私が見た他社の例では、書き換えすべき箇所の一部が仮の「(新元号名)」のまま配信されてしまったケースがありました。慌ただしい状況とはいえ恥ずかしいので、修正部分は赤などで目立たせておくといいでしょう。

4月1日、広報担当者は発表時間の11時半にテレビの前に集まりました。発表が10分ほど遅れ、やきもきしたそうです。11時40分ごろにようやく菅義偉官房長官の口から「令和」が発表に。急いで「〇〇」部分の書き換えと最終確認を行い、発表から30分後には2件とも配信を済ませたそうです。「持ち込み(投げ込み)は都庁の記者クラブへ行くのですが、当社から近いことも功を奏しました」(新宿ワシントンホテル企画課・百瀬梢さん)。

そのリリースを見てみましょう。

(ポイント1)タイトルなどに「令和」の文字を多数盛り込んで、新元号に関するキャンペーンだということをアピールしています。おそらくこれを受け取ったメディア関係者は「おっ、もう『令和』に関連するリリースがきたか!」と思わず手を止めたはずで、効果は絶大だったと思います。

(ポイント2)配信日はもちろん「4月1日」。発表当日にこだわることが最重要です。(ポイント3)余白が適度にあるのも、いいレイアウトです。当初は「改元とは」といった副次的な要素も入れていたそうですが、「1リリース1テーマ」の原則に従っています。特にこうした急ぎ案件ほど、情報はシンプルにした方がいいのです。



おもしろいと感じたのは、来店時に氏名が確認できる公的証明書が必要なことなど詳細な注意事項が明記されていたことです。ここまで詳しく書く必要はない気もしますが、近年は情報サイトにリリースがそのまま転載されるケースがあり、それを見た消費者が直接問い合わせてくることもあるのです。これからの時代は、そこまで意識したリリースづくりが必要かもしれません。

配信数はメディアが180、ライターなどが150程度。翌日の『めざましテレビ』(フジテレビ)で令和にまつわる企業の取り組みのひとつとして紹介されたほか、『日経新聞』やネットでも約80の転載がありました。「予想以上に掲載してもらうことができ、広告費換算で約1000万円の露出がありました」と新宿ワシントンホテル企画課の柴崎貴輝さん。消費者の反響はどうだったのでしょうか …

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