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IRの学校

ファン株主づくり 優待制度をどう活かす?

大森慎一(Prop Tech plus 監査役)

広子たちはIR担当として、忙しくも刺激的な日々を送っている。株主総会をよりよいものとするために、他社の株主総会を見て感じたことを、さらにフィードバックし、理解を深めているところだ。



東堂:前回は、「株主総会は企業理念を社会に問う機会」というお話でしたね。

広子:ちょっと待って、大森さん。理想論はいいですけど、実際の株主総会では、いくら会社側が努力しても、受け取る側の株主が評価してくれるか少々疑問ですよね。

大森:おやおや。いつになく辛口だね。

広子:質疑応答の内容が、ちょっとショックだったもので……。

大森:ふむふむ。

広子:わが社の株主総会でもそういった風潮があるのですが、株主からの質問の大半が株主優待に関する質問だったんですよ。「同業他社と比べて少ない」とか「使える期間を延ばしてほしい」とか。質問というより要望ですね。社運を賭けた大規模投資も行うって発表していて、対処すべき課題についても丁寧に説明していたのに、これに関する質問はひとつだけですよ。

大森:まあまあ。気持ちは分かるけど、株主優待利回りなんて言葉もあるくらいだから、一般投資家の目線だとそんなものではないのかしら。

広子:人の言葉使って、茶化さないでくださいよ。優待制度はファン株主づくりには欠かせない要素ですし、そういう見方も重要ですよ。でも、そこしか見ていない株主さんは会社のファンではないよなって。

大森:うん、その気持ちは分かるねえ。

広子:挙句の果てには「株主総会のお土産を廃止した、というけど株主軽視ではないか」ですって。この質問には、会場内も失笑でしたが。

東堂:私が参加した株主総会では始まって間もなく、お土産だけもらって帰る人も見受けられましたね。

広子:えっ、何しに来たのよ?

大森:まあまあ。よし。じゃあ、株主総会での運営方法と、総会のお土産、株主優待のあり方・内容を分けて整理していこうか。

株主総会での質疑応答

大森:株主総会での受け答えなんだけど、他に何か感じたかい?

広子:はい、各担当取締役が答える形だったので、株主優待の質問のたびに、同じ取締役が出てきて丁寧に答えるのですが、一言一句同じなので、なんか滑稽で。紋切り型の冷たい回答にも思えてきて、複雑でした。

大森:本当に回答が同じになるような質問が続くようだと、打ち切るのも手かもしれないね。

広子:この対話重視の時代に?

大森:そうだけど、「建設的な」が抜け落ちすぎていないかな?打ち切ると言っても、株主優待に関する質問だけだよ。「株主優待の件につきましては、いろいろなご要望もおありでしょうが、当社の現状では、これまでの説明以外のご回答はできません」という感じ。

東堂:なるほど。「株主優待の際に同封するアンケートも参考にしていますので、是非ご意見をください」と加えてもいいですね。

株主優待などのあり方

大森:さて、次にあり方や内容の問題だけど、総会のお土産は株主間の不公平議論が根強いね。また、目的の正当性、対費用効果などが論点かな。

広子:不公平ということは分かりますが、目的の正当性というと?

大森:お土産の目的が、株主の出席者を増やすためだと仮定する。

東堂:実際に、お土産をやめたら、出席する株主が激減した、なんて記事も読みました。

大森:そうだね、残念ながら。で、一般的に、ガバナンス意識を持たずに出席している株主にとっては、総会決議なんかには興味もないだろうから、与党株主的な動きになりやすいのではないかと。議決権の定足数集めに窮している会社なら仕方ないけどね。

広子:会社にコミットしている株主だけで定足数が確保できれば、お土産は必要ないですものね。

東堂:逆にお礼もしたくなりますね。

大森:そうだね。最後に対費用効果の面だけど、お土産も株主優待も機関投資家からみると、自分たちが享受できるメリットが薄いから「余計なもの」が出発点だ。

東堂:でも、会社側にもメリットがありますよね。弊社も、製商品を利用するので、費用も限定的でサンプリング効果もあるんですよね。

大森:だよね。じゃあ、そのサンプリングの効果、何%が顧客として定着して、どのくらいの売上につながっている?広告などと比較して効果は?こんな風に定量的に効果測定できている?

東堂:そこまでは……。

大森:そこがきちんと数字で説明できると、機関投資家とも対話できるし、株主の質問にも答えやすい。

広子:一度整理してみます。

大森:株主は、何らかの理由、例えば「製商品やサービスが好き」とか「会社の成長性が高い」「配当利回りが高いから儲かりそう」などで、会社に投資してくれたわけだから、それぞれ会社に対する要望・期待は異なるわけだね。

広子:総会の質問に表れていますね。ファン株主になって、応援していただきたいですね。

大森:そうだね。株主の属性の分布とか会社のステージを勘案して、資本政策を策定し、そこに導くための株主へのメッセージを作るんだ。その実現の手段のひとつとして、株主優待があると考える。

東堂:いろんな株主をより深い会社の理解者へと導く感じですね。

大森:いいねえ。

広子:弊社はいいですけど、一般消費者向けではない製商品の会社は、費用もかかるし、事情が異なりますよね。

大森:そうだね。工夫しがいがあるね。ふるさと納税のように地場の特産品を使って地域貢献しているとか、復興支援につながるものとか、会社の姿勢が示せるものがいいんじゃないかな?

広子:復興支援だと、毎年見直す感じになりますね。大変ですね。

大森:わっはは。そりゃあ、そもそも毎年、会社のステージや株主属性に応じた株主へのメッセージを見直すべきだからさ …

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