本連載6回目となる今回は、大学による「一連の広報活動をどう評価するか」という広報担当者最大の課題(と私は考えています)を取り上げます。
2019年度は中堅私大の志願者増
ところで、2018年末から今春にかけて2019年度入試(2019年4月入学者を選抜する入試)の志願者数が週刊誌をはじめ各種メディアで話題になりました。今回の特徴のひとつは、政府の政策誘導などの影響で大手、有名、高偏差値の私立大学が合格者数を絞り込むと予測され、受験生の安全志向が高まり、中堅私立大学が軒並み志願者数を増やしました。
教育情報会社の大学通信のまとめによると、一般入試志願者数ランキングは従来の大手私立大学が名を連ねる一方、一般入試志願者伸び率ランキングの上位は中堅私立大学が独占しました。追手門学院大学の一般入試志願者数も1万5798人と7年連続で増加しています(図1)。こう書くと「結局、志願者数というのは外部環境の変化に左右され、広報活動は寄与していないのではないか?」と思われるかもしれません。志願者数という1年単位の結果だけを指標にすると確かにそうでしょう。
本連載2回目で大学の広報活動の中には学生募集に直接寄与することを目的とした「入試広報」と社会的評価の向上を目的とした「経営機能としての広報」の2つの役割があることを紹介しました。志願者数というのは前者についてはその指標となるものですが、後者についてはそれだけでは不十分だと考えます。そこで、前回の連載でも引用した、個人研究の一環で2016年に全国の国公私立大学743校にアンケート調査を行った結果(245大学から回収)を引用します。
成果指標が未確立な状況が明らかに
追手門学院大学の場合は広報課にあたる「経営機能としての広報」を担当する各大学の部署に対し、「広報活動の成果測定をしているか」と質問したところ、国公私立232大学から回答がありました …