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記者の行動原理を読む広報術

記者は第三者委報告書をどう読むか?

松林 薫(ジャーナリスト)

昨今、世間の注目を集める企業や役所の不祥事では、第三者委員会による調査と報告が行われるのが通例だ。報告を聞く側の記者が持つ「過去・現在・未来」に関わる3つの視点とは。

平成が終わり、令和が幕を開けた。実は業界内の一部では、「10連休の直前に不祥事を公表する企業が相次ぐのでは」という懸念がささやかれていた。毎年、GWや盆、正月などの連休前には、不祥事に限らず記者会見やプレスリリースが急増する。他のニュースに埋もれやすいからだ。

そのうえ今回の場合は、平成のうちに発表すれば改元のお祭り騒ぎで印象が薄れ、「前の時代の話」として忘れられやすいのではないか、というわけだ。

それはともかく、平成の末期には世間の注目を集める企業や役所の不祥事が相次いだ。最近、こうした事態を収拾する際によく使われる手法が第三者委員会による調査と報告だ。今回は、記者が第三者委の報告書をどのような視点から読んでいるかを解説しよう。

新事実の確認が最重要

第三者委による不祥事の調査が終わって報告書がまとまると、当該企業もしくは第三者委が記者会見を開く。会見では、最初に報告書と要約、企業側のコメントが紙で配られるのが一般的だ。記者はそれを受け取ると、急いで中身に目を通す。このときの記者の心境は「入試会場で、配られた問題に最初に目を通す瞬間」に似ている。実は記者の側も、発表者と同様、「自分たちが試されている」という感覚を持っているからだ。

このとき記者の頭の中にあるのは「過去・現在・未来」に関わる3つの視点だ(図1)。具体的には❶自分が事件について報じてきた見立ては正しかったのか❷新しく判明した事実は何か(今日報じるべきニュースは何か)❸次の焦点は何か(これから何を取材すべきか)──という問題意識だ …

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