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AdverTimes Daysレポート

SDGs達成に向けたパーパスで ブランドと消費者の絆をつくる

新名 司(ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス アシスタント コミュニケーション マネジャー)

創業時から事業を通じた社会貢献に取り組んできたユニリーバ。同社がサステナビリティの実現に力を入れている背景と社内浸透施策について、ユニリーバ・ジャパン・ホールディングスで2009年から広報を担当する新名司氏が語った。

レインフォレスト・アライアンス認証茶園で働く女性。

「サステナビリティを暮らしの"あたりまえ"に」をパーパス(目的)に掲げ、国連でSDGsが採択される前からサステナビリティを重視してきたユニリーバ。

この考えは創業時から受け継いできたものだ。始まりは前身である「リーバ・ブラザーズ」創業者のウィリアム・ヘスケス・リーバが、1884年にサンライト石鹸を発売し、英国に衛生的な習慣を普及したことに遡る。つまり、元来事業を通じた社会貢献に取り組んできた企業なのだ。

ビジネスプランと3つの約束

2010年に発表したのが、新ビジョン「ユニリーバは、環境負荷を減らし、社会に貢献しながらビジネスを成長させる」と、それを実現するビジネスプラン「ユニリーバ・サステナブル・リビング・プラン」。このプランでは数値目標も定め、❶10億人以上のすこやかな暮らしの支援 ❷環境負荷を2分の1に削減 ❸数百万人の暮らしの向上を「3つの約束」とした。

現在、それぞれの約束の実行も進んできている。例えば、「Dove(ダヴ)」は❶に貢献。2017年に行った調査で、「日本の10代女性のうち、自分の容姿に対する自信を持っている人はたった7%」と世界で最も低い数値が出たことから、自己肯定感の向上を目指す日本発の動画「リアルビューティーID」を制作した。

ダヴは「すべての女性が自分の美しさに気付くきっかけをつくる」をパーパスに掲げてきたブランドで、2004年に「ダヴ セルフエスティーム(自己肯定感を高める)プロジェクト」を発足した。2017年には、CMなどのクリエイティブで画像修正を行わない、などの約束を発表。日本でも画像加工をしていないことを示すマークを表示している。

ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス アシスタント コミュニケーション マネジャー 新名司氏は「こういった取り組みの結果、消費者のロイヤリティが高くなるケースも見られます。消費財がコモディティ化する中、ブランドのパーパスに共感していただくことはとても大切です。ユニリーバの場合、SDGsがブランドと消費者の絆をつくっているとも言えますね」と話す。

同社では、ダヴ、リプトン、ヘルマンズ、セブンス・ジェネレーションなど26のブランドを「サステナブル・リビング・ブランド」に指定している。

ガールスカウト日本連盟と協働で自己肯定感を高めるワークショップ「ダヴ 大好きなわたし~Free Being Me~」を開催。

サステナビリティがキーワード

❷に関しては、2030年までにバリューチェーン全体でのCO²排出量の半減を目指している。国内ではすでに100%再生エネルギーに切り替えていて、残る課題は家庭からのCO²排出量の削減だ。

ただ、「目標の中には未達成のものも、途中で見直したものもある」と新名氏。初めての試みのため、目標設定が難しいのだ。コツは、「何のためにやるのか」という目的を常に明確にすること。

「日本では特に、できるか分からないことは言えない、始められないと固く考えがちです。目的を決めたら、まずは取り組んでみることを大切にしてほしい。やっぱり違うと思ったら、変えてもいいのです」。

❸の約束で、最も力を入れているのが「持続可能な農業」だ。例えば紅茶ブランド「リプトン」では、すべてのティーバッグ製品で、環境保護や茶園で働く人々の権利などの基準を定めた「レインフォレスト・アライアンス認証」を取得した茶園の茶葉を、使用している。

新名氏は「世界的にサステナビリティやSDGsへの貢献が消費者の製品選択の基準のひとつになってきています」と話す。実際に同社が2015年に実施した調査では、消費者の半数以上が環境や社会に配慮した製品・サービスをすでに購入しているか、購入したいと考えていることが分かっている。

このように、サステナビリティはビジネスの成長を後押しするキーワードにもなっている。成長の加速のほかにも、リスクの低減、コストの削減、信頼の強化につながっているのだ。それぞれの実績は図1の通り。

図1 サステナビリティがユニリーバの成長を後押し
出所/ユニリーバ

新名氏は「サステナビリティは、長期的な成長を見据えて取り組むことが大切です」と語った。

課題は16万人以上の社員浸透

全世界16万人以上の社員を擁するユニリーバで課題となったのが、「ユニリーバ・サステナブル・リビング・プラン」の社内浸透。広報担当としてその指揮を執ってきた新名氏は、2つのポイントを意識することで社員らの認知向上に成功したという。

ひとつ目がトップコミットメント。経営陣が事あるごとに話題にし、先陣を切って取り組む姿を見せ続けることで、社員にも伝わりやすくなる。まずは各国のトップを集めた会議で共有し、彼らを通じて1~2カ月で現場の社員にも浸透させていった。日本では、独自に東京・渋谷の映画館で全社会議を開催。特別に制作した動画で社員らの理解を促進した。

2つ目が、ビジネス戦略にサステナビリティを組み込むこと。「パーパスはビジネスの成長を牽引する」という考えから、製造工程を含むサプライチェーンだけではなく、ブランド戦略や営業戦略、人材開発・人事評価にいたるまで、環境・社会への視点を活かしている。

新名氏はこれからSDGs達成に向けて取り組もうとする企業に向けて、「それぞれが小さな変化を生み出すことがSDGs達成への大きな力になっていきます。ぜひ力を貸していただきたいです」と締めくくった。

ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス
アシスタント コミュニケーション マネジャー
新名 司(しんみょう・つかさ)氏

米シラキュース大学大学院修士課程修了。2004年日本リーバ(現ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス)入社。2009年からアシスタント コミュニケーション マネジャー。「ユニリーバ・サステナブル・リビング・プラン」の日本市場への展開や、東日本大震災の被災地支援などに携わる。

photo/樋木雅美、川嶌 順

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