"都心に近い便利な街"や"サブカルの街"などの顔を持つ東京都中野区が、人形とSNSを使った異色のシティプロモーションをスタートした。その陣頭指揮をとる酒井直人区長が、「ナカノさん」が生まれた経緯を明かす。

photo/小田光二
中野区 広報体制 | |
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広報担当 | 区民部 産業観光課 シティプロモーション係(4人)、企画部 広聴・広報課(うち広報担当職員9人) |
業務範囲 | シティプロモーション企画、メディアリレーション、ウェブサイト・SNS運用、広報誌編集 |
目的 | 中野区民および外部に対する情報発信、シティプロモーションの推進 |
新宿区の西隣にあり、都心へのアクセスが良い東京都中野区。そのため人口約33万人のうち毎年約3万人が転入・転出を繰り返す流動性が激しい街だ。そんな同区も将来的には人口減少が予測されているため、活気を保ち続ける"持続可能なまちづくり"が課題となっている。
そこで同区は、2018年10月から活気あふれるまちづくりを推進する「シティプロモーション事業」を開始。区民や一般企業とともに中野区の魅力や区内でチャレンジしたいことを話し合うワークショップ「ナカノミライプロジェクト」(計4回)を経て、2019年2月にはプロジェクト「中野大好きナカノさん」をスタートした。
区長は広報のプロフェッショナル
これらの陣頭指揮をとっているのが、2018年6月に中野区長に就任した酒井直人氏。同区の政策室副参事(広報担当)を4年にわたって務めた広報のプロフェッショナルだ。
この10年の間に、地域の自治体を中心に広まり、都内でも渋谷区や練馬区が先陣を切って取り組んできたシティプロモーション。その目的は、❶住民の愛着や誇りを高める ❷外部に魅力をPRすることで定住や移住を促進する、の2つに大別できるが、中野区の場合はまず❶に優先的に取り組んでいる。
酒井氏は「シティプロモーションを通じて、区民に地域に対する愛着や誇り(シビックプライド)や、自分が街の主役であるという意識を持ってもらいたい。そして、中野をより良くしようと、ともに考えてくれる仲間を増やしていきたい」と話す。
その背景にあるのが、シティプロモーション研究で知られる東海大学の河井孝仁教授が提唱する「地域の主権者は住民」という考え方だ。「区が一方的に地域の魅力を発信するのではなく、区民一人ひとりに自発的に発信してもらえるような仕組みをつくることが大切なのです」と酒井氏。それを体現したのが「中野大好きナカノさん」プロジェクトである …