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IRの学校

日本企業のガバナンスは向上したのか?

大森慎一(Prop Tech plus 監査役)

株主総会の準備を始めたが、今は各部署からの資料を待っておりつかの間の閑散期を過ごしている広子たち。そこで日本企業のガバナンスの向上について改めて考えることに。


広子東堂:こんばんは。

大森:こんばんは、今日はいつもより早めに来たんだね。

広子:早く上がれるときは、さっさと帰る方がいいと思って。

東堂:今は株主総会準備の初期段階で、各部署に前期のトピックスとそれにまつわる想定質問・回答をまとめてもらっているところなんです。だから私たちはまだそれほど忙しくはないんです。

大森:なるほどね、もうそんな時期か。1年が経つのは本当に早いね。

広子:そうですよね、歳を取ると1年がどんどん短く感じるようになるって聞きますから。

大森:おいおい。

広子:ところで、当社の社外取締役を務めている弁護士の方がまたひとり入れ替わるようで、オリエンテーリングを頼まれているんですよ。やるのはいいですが、年中行事みたいになってもねえ。

大森:日本における社外取締役の平均在任期間は4年程度だっていうからねえ。社外取締役の導入制度が始まってまだ日が浅いから仕方がないけどね。それに、逆に長すぎる弊害の方が大きいように考えているんじゃないかな。

広子:短期間で会社のガバナンスに貢献できるようになるんですかね……。

大森:そのためにオリエンテーションするんでしょ。

広子:おっと、そうですね。私たちの役目でした……。それにしても弁護士の後任も弁護士っていうのはワンパターンですよね。

大森:まあ、会社がその社外取締役に期待する役割が、真に法的な観点からのアドバイスなら、弁護士が続くのはむしろ自然じゃない?

東堂:それはそうですけど。

社外取締役に期待する役割

大森:ところで、会社は各社外取締役に何を期待しているんだい?

広子:本音ベースでは聞けていないですね。コーポレートガバナンス報告書にはなんて書いてあったっけ?

東堂:たしか、弁護士として培われた豊富な知識と高い見識、客観的な立場と独立性がある、みたいなことだったと思います。

大森:むむむ、弁護士さんこそ得意分野が分かれていると思うので、ざっくりとしすぎだなあ。

広子:ですよね。

大森:オリエンの前に一度、経営陣と議論した方がいいかもね。

広子:社外取締役の人選に文句つけるなんておこがましいなあ。

大森:ははは、そうじゃなくて。前にリスクアセスメントやリスクマップを見て、といった話をしたよね。

広子:はい、でしたね。

大森:そのリスクマップをもとに、経営陣にリスクに関する考え方を聞く、という形の議論だよ。

東堂:考え方というと?

大森:どのリスクを重視しているのかとか、それぞれどんな対策を練っていくのか、優先順位は、といったリスクマネジメント計画について聞きたいね。そして、そこからそれぞれの社外取締役に期待する役割を具体的に整理する。

広子:そして、それをオリエンテーションに活かす、ってことですね。

東堂:でも、いきなり社外取締役にリスクの話をするのは気が引けますね。

大森:それは違うよ、本来は就任要請の際に、自社の現状や課題について明確に伝え、その上でこういう役割を期待している、と説明しないといけないんだよ。

東堂:そうでしたね。でもその流れだと、オリエンテーションで話さなくてはいけないことが普段のIRプラスアルファになりますね。

大森:そうだね、でも、たぶん想定問答の範疇にほとんど網羅されていると思うけどね。ただし、リスク回避のための法的プロテクトについてや環境が似ている業界への展開など、想定質問の詳細・背景説明に近いイメージかな。

広子:分かりました。でも、事業にプラス方向な表現が多いですね。

大森:多少意識したよ。リスクを恐れてブレーキばかりじゃ、経営効率は上がらないからね。

着実に変わる組織体制

大森:残念ながら、今回の人選はとりあえず基準を満たそうっていうアリバイ的なものに近いかもしれないけど、広子チームで巻き込んで引き上げれば、大丈夫だ。

広子:頑張ります。

東堂:はい。でも、日本のコーポレートガバナンスって、いろいろ制度が強化されてはいますけど、結果として進歩していると思いますか? …

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