前回は周年事業の中核となる記念式典の広報的位置づけについて、追手門学院創立130周年記念式典を例に「直接広報」の視点から考えました。今回は広報部門の基幹業務である、新聞・テレビ・ネットなどのメディアを通じた発信およびメディアとの関係づくり(以下、メディアリレーション)を取り上げます。
「受け身」の中堅私大に取材は来ない
多様なステークホルダーと良好な関係を築くために情報発信は不可欠であり、とりわけメディアリレーションはその重要な手段です。広報会議編集部が実施した、113社の広報部門を対象とした調査「2019年わが社が注力したい広報活動ランキング」でも1位はメディアリレーションでした。私自身、様々な大学広報の方と意見交換をさせていただく機会がありますが、そこでも話題となることが多いです。広報会議本誌の他のコーナーにおいてもそのノウハウが語られており、関心の高さがうかがえます。
特にジャーナリストの松林薫氏による本誌連載「記者の行動原理を読む広報術」では、発信するネタづくりからメディアへのアプローチの方法、メディア特性まで記者経験を踏まえた実践に役立つ内容が説明されており、広報活動に関わる人には必読だと思います(ちなみに私は学内教職員向けの研修テキストとしても活用しています)。
今回は大学、特に中堅私立大学業界におけるメディアリレーションについて考えてみましょう。本連載2回目で私の考える「大学広報の役割」を段階別に紹介しましたが(図1)、中堅私立大学の多くはまだ「メディアリレーションをどうするか」という段階で逡巡しているところも多いように思います。その点、大手私立大学や国立大学では学外での広報経験者の登用やPR会社の活用などが進んでいます。特に野球や駅伝といった社会的に注目されるスポーツや研究成果の発表が多いため、必要に駆られて充実していった面もあると思います。
文部科学省が全国の国公私立大学などを対象とした調査(2012年10月公表)によると、広報担当部署がメディアリレーションを行っている割合は、国立大学が97.6%、公立大学が81.5%、私立大学が73.6%でした。国公私立の内訳は明らかにされていませんが、学生数規模別でみると、1000人以下の大学が58.6%であるのに対し、1万1人以上の大規模大学は95.3%と、私立より国公立、小規模より大規模の大学の方がメディアリレーションに取り組んでいることが分かります …