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実践!プレスリリース道場

「ゴーゴーカレーがM&A」で話題化 ビズリーチの広報戦略

井上岳久(井上戦略PRコンサルティング事務所・代表)

新聞や雑誌などのメディアに頻出の企業・商品のリリースについて、配信元企業に取材し、その広報戦略やリリースづくりの実践ノウハウをPRコンサルタント・井上岳久氏が分析・解説します。

今月はメディアになかなか取り上げられにくい、IT業界におけるB to Bの案件でありながら、テレビをはじめ多くの露出に成功した例を紹介したいと思います。

テレビCMでおなじみ、人材サービスのビズリーチでは2017年11月からM&Aのマッチングプラットフォーム「ビズリーチ・サクシード」をスタート。事業を譲りたい企業と、譲り受けたい企業が社名非公開で情報を掲載し、M&Aの相手を探せます。

その背景には高齢企業の後継者不足があります。2016年には約3万件の企業が休廃業・解散をしています。私の知り合いの飲食店にもそういう例は多数あり、まだまだ経営は継続できるのに、後継者がいないために会社をたたまなければならないという深刻な問題となっています。

それを解消する手段のひとつとしてM&Aがあるわけですが、まだまだM&Aに抵抗のある経営者も多く、後継者不足に悩む中小企業のうち具体的にM&Aによる譲渡を検討している企業はわずか3.4%に留まっているそう。だからこそ、このようなプラットフォームができるのは歓迎すべきことです。

ただ、相手企業の情報が分かりづらいため、なかなか成約まで結びつかずにいました。そこで2018年11月、事業を引き継ぎたいと考える主体企業名を明示した上で、譲渡したい企業を公募する「承継公募」開始の告知をしたのが今回のリリースです。第1弾として金沢発のカレーチェーン「ゴーゴーカレーグループ」が主体となり、後継者不足に悩む全国のカレーの名店を募集することになりました。

ゴーゴーカレーが募集するのは、❶味やブランドを継承してほしいカレーの名店❷ゴーゴーカレーまたはカレー店として運営できる飲食店❸レトルトカレーを製造できる工場、の3パターン。中でも❶の地方の名店を受け継ぎたい意思が強いようで、2017年には石川県の歴史あるインド料理店「ホットハウス」を承継しています。

同社はビズリーチ・サクシードも利用していたため、「承継公募」にも乗り気になったようです。カレーと飲食店の専門家である私から見ても、ひとつのカレーチェーン店で事業を広げていくには限度があり、新たな味で経営を拡大するのは理に適った手段だと思います。

リリースはメールで約1000通を配信しました。広報室の辻香織さんが配慮したのは、どんなメディアに出れば必要な人に情報が届くかということ。ホットハウスの元社長・五十嵐憲治氏が69歳だったため、その年代の人を念頭にNHKで取り上げてほしい番組に連絡を取り、「五十嵐氏の跡を継ぐ世代が読むのであれば日経新聞だろう」などと想像を広げていったそうです。

そこから、様々な業界の専門紙をピックアップしていくことで最終的には多くのメディアリストができたのです。

マーケティングチームと連携

ビズリーチというとCMのイメージが強いですが、「広告を担当する事業部のマーケティングチームと連携して、記者発表の翌日に日経新聞へ広告を出したり、反対に新しいCMが流れるときはリリースを配信して広告専門のメディアにアプローチしたりと、相乗効果が出るようにしています」と広報室マネージャーの午頭優佳さん。

11月11日の記者発表には24媒体が出席。NHK『おはよう日本』やテレビ東京『WBS』など6つの番組で紹介されたほか、毎日新聞のデジタル版から「Yahoo!ニュース」に転載されたり、「AbemaNews」から「NewsPicks」に掲載され500件ものコメントが集まったりと大きな反響が得られました。メディア掲載は約70件で、2018年の同社リリースの中でも反響が大きかった案件のひとつだといいます。

さらにNHKに対しては、過去の番組をホームページで調べて外食の担当者に当たっていき見事、放送にこぎつけたとのこと。私が広報に必要と思うのは、このアクティブさです!

ではそのリリースを見てみましょう。(ポイント1)まずキービジュアルが目につき、タイトルと連動して「ゴーゴーカレーが企業の譲り受けを公募するのだな」と一目で分かります …

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