記者と広報は、なぜすれ違う?第一線で活躍するメディアの記者に本音で語ってもらいました。
全国紙記者 Mさん(男性)地方支局を経て本社で行政や事件事故を担当。大きなニュースや特集企画を書く達成感はあるものの、違和感も。大組織や権力に対峙するより、地域に溶け込んで関係を太くし「この人たちのために書きたい」と思える仕事が好き。 |
中部地方で交通問題を取材していた時のこと。1面に独自ネタを掲載した当日、朝9時ごろに携帯電話が鳴った。番号は「東京03」から始まっていた。ある程度大きなニュースを載せた朝、記者はその反応が分からず、携帯が鳴るとドキドキするものだ。ただし記事の内容自体に不安要素はなかったので、どんな用件なのかすぐには思い当たらないまま、軽い気持ちで電話に出た。
よくある"言い換え"なのにクレーム
「これ、ぜんっぜん違うんですよ。なんですか、これ?」と、興奮した男性の声が耳元に響く。なかなかの勢いで問いただされ、やや面食らってしまった。電話の主は、記事のなかで"主人公"としていたマンモス企業(A社)の広報担当者だった。この記事では、あるサービスがいよいよ当地でも導入される見通しとなったことを伝えた。地元では大きな関心を持たれていたテーマで、結果的には地元紙も夕刊で通信社の原稿を使って後追いせざるを得ないものだった。
この広報担当者は、他紙からの問い合わせ取材で気づき、ネットで記事を確認して、こちらの携帯電話にかけてきたのであった。しばらく前に電話取材をしていたので、きちっと連絡先を記録していたのだろうと思う。
こちらも気の弱い人間なので、「全然違う」と強く言われると「事実としては"導入しない"ということだったのか、完全な誤報だったのかも……」と、ツーっと背中を冷たいものが伝う感じがした。そして、耳の穴を大きくして、息を整えて、先方の指摘を聞いた …
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