オンラインの情報流通構造が複雑化し、広報の手法も変化しています。デジタルPRの基本と戦略に活かすヒントを専門家がお届けします。
今回のポイント
(1)スタートアップの課題は社内カルチャーの確立
(2)まず取り組むべきは「スケジューリング」
(3)ステークホルダーを絞ったイベントを
スタートアップという言葉をマスメディアでもよく耳にするようになりました。今、このスタートアップの間でPR(パブリックリレーションズ)を経営にうまく活用しようという事例が増えています。
従来型のメディアリレーションズだけにこだわらない手法は、スタートアップの方々はもちろん、新規事業に携わる企業の方にとっても参考になるアイデアが隠れているかもしれません。本稿では3回にわたってその手法や具体的事例、ちょっとしたテクニックなどを共有したいと思います。
事例を共有する前に筆者についてお話しさせてください。私は2010年ごろから日本のテクノロジーやスタートアップを取材する媒体でブロガーとして活動し、その後、ブログメディア「THE BRIDGE」を共同創業しました。プロの広報やPRの経験はありませんが、「取材者として話題を読者に伝えつつ、経営者として『THE BRIDGE』をPRする」という立場で感じた体験談として読んでいただければ幸いです。
スタートアップPRの課題
まずはスタートアップにおけるPRを考える上での課題から話したいと思います。スタートアップ経営者から勉強会の依頼を受ける際、「PRは何から取り組めばいいか分からない」という相談を受けることがあります。悩みを分解すると「担当者不在」「話題がない、続かない」「リソースが足りない」「ノウハウ不足」「スケジュールが立てられない」などがよくある例です。
これらの課題は「創業年数が浅い」ことに起因することが多いです。最近では経営に関するメソッドは確立しつつあり、投資家グループなどを経由してノウハウが共有されているという話も聞きます。
一方で、追いつかないのが「社内カルチャー」です。5年、10年と経営してきた企業であれば、創業者から社員に伝えたいこと、製品にまつわるストーリー、失敗や成功など様々な話題が眠っていたりします。取材者や広報の担当者はそういった「隠された話題」をトリガーに、適切なステークホルダーに対して魅力を伝えたり、"世の中ごと"をつくったりするのが共通の仕事になるわけです。
しかし創業から半年や1年では、掘り起こそうにも積み上げたものがありません。「話題がない」のももちろんですが、社会に共感や納得感を与えられるカルチャーが存在し得ないのが一番の課題なのです …