この世には「バカ」がつくほど愛される、PR上手な商品・サービスがある。そんな「PRバカ」と呼べる存在を求めて、筆者が仕掛人を訪ねていきます。
File:12(最終回) 大和ハウス工業「家事シェアハウス」
最近、「シェアハウス」という言葉が市民権を得るようになりました。2010年くらいに映画やドラマの舞台として、シェアハウスが登場するようになったことが認知度を上げたきっかけだと思います。もちろん、それまでも他人同士がともに暮らすということは江戸時代の長屋だったり、学生寮だったりということで存在していたはずですが、シェアハウスという言葉が定義されたことによって、会話の中で自然に出てくるようになりました。元々存在していたものに対して言葉の定義を与えることで、みんなの理解がしやすくなるのですね。
今回取材した大和ハウス工業の「家事シェアハウス」も言葉の定義が秀逸な事例のひとつだと言えます。文字面だけ読んで、家事をシェアするシェアハウスなのかなと私は誤解したのですが、そうではありません。普通の家族の中にこれがあったらいいのにというものを家事シェアハウスのコンセプトで再定義することで、なるほど!と理解が進む面白い商品広報の事例です。では、具体的に、ご説明していきましょう。
家事の悩みを言語化
共働きの家庭が増え、家事を分担するという文化が生まれましたが、多くの女性が困っていることのひとつに「名もなき家事」があると、大和ハウス工業の多田綾子さん(住宅事業推進部 営業統括部 事業戦略グループ)は言います。
「名もなき家事」とは、掃除や洗濯、料理のように名前のついている家事ではなく、脱ぎっぱなしの服をクローゼットに掛けたり、郵便ポストに入っている不要なチラシを捨てたり、玄関に散らかった靴を片づけたりと、「誰かがやらなければならないが名前のついていない家事」のことです。「こういった名もなき家事の多くを女性が担当しているため、家庭内での負担が増えている現状があります」と多田さん。
なるほど、確かに名前はついていないけれど家事に相当するような仕事はたくさんありそうです。美崎家で言いますと、カーテンを開ける、トイレットペーパーを補充する、洗剤を詰め替えるといった仕事は家事ではありますが、「ゴミ出し」のように名前はついていないですし、家族の誰がやるか決まっていません。たまに私もやりますが、ほとんど妻がやってくれているのでしょう。
名もなき家事を家庭内で自然に分担(シェア)できる家のことをダイワハウスの「家事シェアハウス」として形にしたのです。
家事シェアハウスでは、家事がしっかり見える化されていきます。まず、玄関に「自分専用カタヅケロッカー」があります。家に帰ると同時に各自が自分の荷物を個別管理することで、外出から帰ってきたときに出る荷物などをとりあえず部屋に置くということがなくなりますから、部屋の中に散らかった荷物を片づけるという名もなき家事が各自にシェアされたわけです …