全社的な会議の場でIR活動に関する発表を行うことになった広子。社長の命を受けIR活動の効果測定にチャレンジすることになり、ヒントを求めてセミナールームを訪れた。

広子・東堂:こんばんは。
大森:何やら相談があるそうだね。
広子:そうなんです。再来週の全社マネージャー会議で、IR担当が発表する順番が回ってきたんです。
大森:いいじゃない、いつもの調子で広子節を披露すれば。
広子:それがですね、ここにきてプレゼン内容を変更せざるを得なくなってしまって。
大森:えっ、でも再来週の発表が、今になって決まったわけではないでしょ?
東堂:この会議、毎回いくつかの部署が自分たちの仕事内容に加えて、この一年の施策について、注力点やその効果・成果を発表する場なのですが……。
広子:実業部隊は、新製品の話や、マーケティング手法を変えてどう成功したとか、具体的内容を織り込んで成果を発表するのですが、管理系の部門は効果も測定しづらく、成果の主張もできなくて地味なんです。IR担当が前回経営企画部の一部門として発表したときは、IR資料を見せながら業務内容を説明する形でした。
大森:まあそうだろうね。
東堂:ところが、IR担当が単独で発表すると聞きつけた社長が「いいチャンスだし、IRは日ごろ数字を扱っているんだから、バシッと効果測定をしてくれ」とリクエストし始めたのです。
大森:なるほど、仕事内容を話して「日ごろから情報提供ありがとうございます」とか感謝の言葉できれいに締めようとしたのが、できなくなったというわけか。
広子:そうなんです……助けてください。IR活動の効果測定ってどうすればいいんですか?
効果測定の2つのポイント
大森:とりあえず、調べてみたことを教えてくれるかな?では東堂さん、どうぞ。
東堂:はい、大きく分けて、媒体などで扱われた「アウトプットの成果」をもとに評価する手法と、施策などを行った数量など「プロセスそのもの」を評価する手法があるようでした。アウトプット評価では、コーポレートサイトのPV数やユニークユーザー数、サイトへの滞在時間、IRメルマガの登録者数などもありますね。最近ではSNSでの「いいね!」やリツイートなどによる拡散状況も評価に加えられているようです。さらに、報道された記事を広告費換算する方法なども面白いと思いました。
大森:よく調べているじゃない。
広子:でも、今ひとつ納得できない部分があって。例えば、今の広告費換算は、PRではよく見る手法です。ただ、広報やPRではある程度意味のある指標になると思うのですが、IRだと掲載される媒体も違うし、情報の受け手も限られます。いいIR活動をしたからといって記事になるわけではないですし、コーポレートサイトを見てくれるわけではなく、情報そのものの質やインパクトなどの影響も大きいですよね。
大森:その通りだね。ある活動の効果測定を行う場合、❶客観的にかつ効率的に測りやすいこと、❷行動・施策と測定結果の因果関係が分かりやすい、などの条件が必要になるよね。
東堂:アウトプットで評価する場合は客観的な数値に落としやすいのですが、私たちの活動がストレートに反映されるわけではないというところが欠点ですね。
広子:アナリストレポートなどで、私たちのストーリーが評価されたりすると、そのまま成果にもつながっている気がしますが、アナリストレポートは常に作成してもらえるわけではないですよね。毎回、書いてくれると本当にうれしいですけど。
東堂:直接的な評価のために、認知度調査をしたり、アナリストや投資家、株主の方たちにアンケートをとっていたりすれば、客観的だし因果関係も直接分かるのでいいですよね。ただ現状では着手していないので、次回以降の課題になってしまいます。
広子:説明会後のアンケートは多少残ってるんですけど、ちょっと内容から考え直したい感じです。
東堂:プロセスの評価としては、アナリストや投資家とのミーティングや面談回数、一般投資家向け説明会などの開催数や参加者数などに設定すれば私たちの業務評価には適しているかもしれません。ただ、評価を主張しやすいとは思いますが、結果を伴わない場合でも件数は増えていくので、IR活動の効果の測定としてはどうでしょうか……。
広子:といった議論をしたところで現在に至る、という感じですね。
時価総額は究極の指標?
大森:なるほど、二人の違和感はそのあたりなんだね。たしかにその通りだと思う。これひとつで効果測定は完璧だ、という手法はなかなかないよね。
広子:そこを何とか、お願いします~。
大森:ははは。でも広子さん、今年の目標は何だったっけ?
広子:「株価を上げるIR」です。
大森:そうだね、極端な話、業績やその他の要素の影響が大きいこともグッと飲み込んで、「時価総額」を評価の軸にしてみるのもいいんじゃない?
広子:シビアすぎませんか? …