災害時に被害を最小限に抑えるためのカギとなるのが、迅速で正確な情報共有。そのため、自治体が積極的に連携しているのがヤフーやLINEだ。「防災・減災プラットフォーム」としての役割を強化する2社の取り組みを紹介する。
[ヤフー]
530以上の自治体と協定を結び「全国統一防災模試」で意識を醸成
2018年3月、防災に必要な知識や能力を問う「全国統一防災模試」をスマホアプリで実施したヤフー。俳優の本木雅弘を起用したテレビCMも話題になり、約155万人が参加した。
「参加者数の多さが直接利益に結び付くわけではないのですが……」と企画を担当したマーケティング&コミュニケーション本部の山下徹氏。防災模試の目的は、半分が「災害発生時にYahoo! JAPANというプラットフォームを利用してほしい」というもの、もう半分は「防災に取り組む企業」としてのブランディングだった。
発端は新潟県中越地震
同社が「防災」に力を入れる理由は、自社の技術で防災にまつわる課題を解決したいと考えているため。その根底には、同社のビジョン「UPDATE JAPAN(情報技術で人々の生活と社会をアップデートする)」がある。
始動のきっかけは2004年10月の新潟県中越地震。「何かヤフーにできることはないか」と考え、インターネット募金を開始した。これが同年12月のスマトラ島沖地震でも活用されたことで、しだいに防災に関する取り組みが広がっていく。
より本格化したのが2011年の東日本大震災の時。部門横断で災害対応チーム「震災タスクフォースプロジェクト」を結成し、「今できること」をタイムリーに実行した。例えば、電力予報メーターをつくってYahoo! JAPANのトップページに掲出する、地図上で開設中のスーパーマーケットを表示する、など。検索クエリからユーザーが求める情報を予測してサービスに活かす工夫もした。
当時はまだスマートフォンがあまり普及していなかったが、スマホユーザーの増加とともにプッシュ通知を利用した「Yahoo! 防災速報」を導入するなど、スマホに最適化した機能も開発。今では530以上の自治体と災害協定を結んで地域ごとの緊急情報や避難情報の提供を行う「防災プラットフォーム」へと成長した。
PRの力で被害を減らす
山下氏は、ヤフーが取り組む防災のゴールについて「究極だが、人が亡くならないこと」と話す。そのためには❶備えること ❷(災害情報を)いち早く知ること ❸(災害時に)適切な行動をとること、の3つがそろう必要があるという …