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実践!プレスリリース道場

2社コラボ企画を効果的に訴求するプレスリリースの書き方

井上岳久(井上戦略PRコンサルティング事務所・代表)

新聞や雑誌などのメディアに頻出の企業・商品のリリースについて、配信元企業に取材し、その広報戦略やリリースづくりの実践ノウハウをPRコンサルタント・井上岳久氏が分析・解説します。

企業同士のコラボレーションは注目度が高まります。中でも、一見つながりのなさそうな業種間のコラボが多くの人の興味を喚起することは、皆さんもご存じの通り。今回は、ゲームセンター業界を牽引する東洋(埼玉県北本市)と、私・井上岳久が代表を務めるカレー総合研究所がコラボした例を紹介したいと思います。

東洋は以前に当コーナーでも紹介しましたが、クレーンゲームの設置台数世界一を誇るゲームセンター「エブリデイ」を運営するエンターテインメント企業です。代表取締役の中村秀夫さんはクレーンゲームで、私はカレーで、ともに『マツコの知らない世界』(TBS)に出演した仲間であり、かねてから懇意にしていました。ネットゲーム隆盛の近年、ゲームセンター市場は年々縮小傾向にあり、「何か話題になるような企画をしたい」という話を聞き、私も一肌脱ぎたいと思いました。

私がコラボできることといえばカレーです。ただし、クレーンゲームでレトルトカレーをつり上げるものはこれまでもたくさん存在しました。そこで東洋が思いついたのは、ゲームセンター内に電子レンジを設置し、そこで温めてカレーが食べられる「とれたてキャッチャー」というアイデア。

ゲームセンターではこれまで、「もっと長く遊びたいけれど、途中でお腹が空いて外の飲食店へ食べに出かけなくてはいけない」という利用者の声があったそうです。

それはゲームセンターにとっても機会損失にほかならず、とれたてキャッチャーは利用者と運営者双方にメリットがあります。しかも日本クレーンゲーム協会に確認したところ、これまでゲームセンター内で調理できる店はなく、意外にありそうでなかった"日本初"のサービスで、私も面白いと感じました。

肝心なのは景品のカレーです。普通にスーパーマーケットで販売しているようなレトルトカレーなら、スーパーで買えば済む話。既存のカレークレーンがそれほどヒットしなかった理由もそこにあると思われます。そこで私が白羽の矢を立てたのが、当時カレー総合研究所で開発したばかりの「IICAチキンコルマカレー」でした。

コルマカレーとは北インドのムガール料理に端を発し、インドでは多くの家庭でつくっている定番のカレーです。カレー総合研究所ではインド最高峰の料理学校「IICA」と提携して、このコルマカレーを開発することにしたのです。IICAは5つ星ホテルに約4000人の料理人を輩出した実績があり、私が運営する「カレー大學」ではIICAへの短期留学を行うなど、以前から付き合いもありました。

コルマカレーは決められた手順を踏まないとまったく別物の味になってしまいますが、IICAで教わった通りにつくると目からうろこが落ちるほどおいしいのです。IICAにもさすがのこだわりがあり、30回以上の試作を重ねた末、ようやくインド人がこだわるスパイス感を表現した力作ができあがったのでした。試食してもらった料理のプロも皆、口をそろえて「絶品だ!」と評価してくれました。

ネットでトライアル販売したところ税込700円もする高価格商品ながら、いきなり楽天市場のカレーデイリーランキングで1位を獲得。ヤマダ電機の会員向けサイトの掲載商品に選ばれたり、テレビ通販のベストセレクションに選ばれたりと次々に引き合いがある「幻の人気商品」となりました。

一般の商店では手に入らない稀少価値と、700円の商品が100円のゲームで取れるかもしれないお得感。まさにクレーンゲームにぴったりの商品だと直感したのです。導入は2018年8月、エブリデイ行田店と決まり、PRに向けて動き出しました。

こうしたコラボ企画の場合、リリースには3つのパターンがあります。
❶統一リリースを2社で出す
❷一部分共通で、それ以外は各社独自のリリースを出す
❸2社それぞれにリリースを出す

私は、これまでの多くの経験から❶と❷は難しいと感じていました。❶は企業文化が異なる上、上層部や関係部署から各企業ならではの厳しいチェックもあり、配信までに疲れきってしまうのです …

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