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新時代の企業ブランディング

「旭硝子」から「AGC」へ 社名変更を通じたブランド再構築

AGC

約30の国・地域に210のグループ会社を持ち、5万人以上の従業員を擁するAGC。広報・IR部長の玉城和美氏が、2018年7月に旭硝子から現社名に変更した同社のコーポレートブランド再構築について語った。

ブランドステートメントの制定と同時にブランドブックも制作。約5万3000人の従業員に配布した。

2018年、旭硝子から社名を変更したAGC。コーポレートブランドの再構築について広報・IR部長の玉城和美氏が紹介した。

1907年に創立し、1950年代からインドを皮切りにグローバル展開してきた同社は、連結子会社が210、従業員数は連結で約5万3000人。グループ会社の数で見ると海外比率は約8割にも上る。「現地パートナーとの合弁会社やM&Aでグループ入りした会社、100%子会社がそれぞれ別ブランドで事業活動を行っていたため、お客さまからは競合だと勘違いされていることもあった」と玉城氏。

企業メッセージを統一するまで

同社がブランディングを意識し始めたのは1987年。英語の社名「Asahi Glass Company」の頭文字をとった「AGC」をコーポレートシンボルとして導入した。2002年からグローバルグループの一体経営を本格化し、創立100周年を迎えた2007年、グループブランドをAGCに統一。連結グループ会社は原則として社名の頭に「AGC」と付けるようにルール化し、ロゴマークもリニューアルした。

2007年以降は親会社が「旭硝子」と名乗りながら、2017年の業績では営業利益の53%は化学品で、ライフサイエンス分野などの新たな事業領域も拡大。さらに、ロゴのガイドラインが徹底されず、世界各地でロゴやステートメントの扱い方の問題が浮上してしまったという。「企業イメージも会社ごとにバラバラになってしまい、ひとつのAGCブランドが訴求できていないという状況になってしまった」と振り返る。

そこで今回、社名変更に向けたプロジェクトを推進。創立110周年を迎えた2017年にグローバルグループ一体経営の総仕上げとして、親会社「旭硝子」は「AGC」への社名変更を決定した。ブランドステートメントを導入したほか、ロゴのデザインもリニューアル(図1)。色を明るくしたほか、GとCのカーブをなだらかにしたりCの間口を広げたりすることで、柔軟さやオープンマインドを大事にする企業姿勢を示している。

図 AGCのロゴマークの変遷

AGCグループには"Look Beyond"というグループビジョンがあり、「私たちの使命」「私たちの価値観」「私たちのスピリット」というピラミッドから成り立っている。

「その頂点にある〈私たちの使命〉が、『"AGC、いつも世界の大事な一部"~独自の素材・ソリューションで、いつもどこかで世界中の人々の暮らしを支えます~』というもの。ブランドステートメントは、その〈私たちの使命〉を実現するための"目印"や"合言葉"としての機能を果たせる表現、と位置づけています」。

また、2015年にCEOに就任した島村琢哉社長をはじめ、経営陣には以前から組織風土を変えて「大企業病から脱却したい」という考えがあった。各種アンケート調査でも部門間の壁が必ず指摘されてきたこともあり、ブランドステートメントの制定はAGCグループが一体となって実施した。企業風土を変えていくための取り組みという側面もあったのだ。

ブランドステートメント制定にあたっては、2017年11月に全世界のグループ会社の従業員に募集要項をメールで送信した。すると1カ月で902件の応募があった。プロジェクトメンバーや事業責任者、CEOによる選考、従業員投票を経た結果、チェコの拠点で勤務する従業員が応募した「Your Dreams, Our Challenge」に決定した。さらにそこへブランドストーリーも加えたブランドブックを制作し、グローバルも含めた全従業員に配布した。

「ブランドステートメントにかけた想いやトップメッセージを入れ、従業員一人ひとりに対して『これは私たちの使命を実現させる際の羅針盤となる言葉なのだ』と伝えている。ただブランドステートメントをつくるだけではなく、その役割もきちんと伝えることが重要」と玉城氏は話す。

会社案内や名刺に使うグラフィックエレメントも導入し、グローバルグループ全体で使用するようにしている。

従業員参加型イベントも実施

グループの一体感を持たせるために、ユニークなインターナルコミュニケーション活動も行っている。

ひとつが、創立110周年記念として社名変更に先駆けて2017年9月にスタートさせた社内向けウェブテレビ局「CH110」だ。社員らが夢を語る「シマパラさんのOneTeamな夢かなえたろか」など、1年で30本以上の動画を制作している。ちなみに「シマパラさん」とは島村社長そっくりのカピバラのキャラクターのことだ。

番組内で社員によって語られた「夢」のうち、実現に至ったケースもある。それが、「社員全員で集まって、交流したい」という社員の夢をかなえた参加型イベント「Aフェス」だ。さいたまスーパーアリーナで2018年9月2日に実施し、当日の参加者は約2000人。親会社だけでなくグループ会社も巻き込んだ大規模な社内向けイベントは同社ではこれが初めてだったという。

イベントではAGCのオリジナルグッズを配布したほか、スポーツイベントやクイズ大会、AGCの製品や技術を遊びながら体感できるプログラムを実施した。経営幹部も「応援団」となって、声掛けや自身を模したキャラシール付きのお菓子を配布して回った。「子どもたちがAGCの歴史や製品技術を遊びながら学べる『AGCpark』というスペースも設け、従業員の家族にもAGCのことを知ってもらうことができた。まさに『OneTeam』を体現するようなイベントになったのでは」と総括している。

110周年関連の取り組みは一旦終了となるが、「社内外に向けたブランディングはこれからも継続的に実施したい」と玉城氏。ビジョンやブランド浸透を目的としたワークショップの実施や経営幹部と従業員との対話会などにも継続して組み込んでいくことを視野に入れている。

「理念の浸透や認知度向上は短期間で成し遂げられるものではない。今後もグループ報や各種社内向けツールをベースにして、組織風土を醸成していきたい。グループ報ではメンバーの顔が見える紙面づくりを進めてければ」と今後の展望を語った。

2018年9月2日にさいたまスーパーアリーナで開催したイベント「Aフェス」には約2000人が参加。工場が稼働しており出席できない社員のためのプレ企画も用意した。

AGC 広報・IR部長
玉城和美(たまき・かずみ)氏

大学卒業後、信託銀行に入社。2006年にAGCに転職。2012年までの6年間、IRを担当。その後、電子カンパニーの管理室、広報担当部長を経て、2017年から現職。広報、社内ブランディング、広告マーケティング、IRといったコーポレートコミュニケーション全般を担っている。

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