オンラインの情報流通構造が複雑化し、広報の手法も変化しています。全12回シリーズで、デジタルPRの基本と戦略に活かすヒントを専門家がお届けします。
今回のポイント
(1)読み手が参加できるリリースはSNSで拡散する
(2)生活者の役に立つ研究テーマは要注目
(3)大学ならではのニッチな話題もニーズあり
少子化に伴う18歳人口の減少を背景に、大学を取り巻く環境は厳しさを増しています。そのため最近では、広報に力を入れる大学が少しずつ増えてきています。今回は、その中でも特に先進的な取り組みをしている大学のプレスリリースを紹介しながら、「大学広報」のポイントを解説します。
リリース本数の少なさに課題
大学には各分野のスペシャリストである教授や、最新の研究成果を記した論文など、たくさんの情報が集積しています。しかし、まだこれらを広報に活用している大学は少ないのが現状です。専門性が高い情報のため十分に活かしきれず、宝の持ち腐れになっているのです。
PR TIMESには約200の教育機関のアカウントがありますが、リリースの配信数は多い大学で月に3~4本。一般企業に比べても、決して多い数とは言えません。大学広報が盛り上がってきているとはいえ、まだまだ奥手な大学が多いのも事実なのです。もっと積極的に広報活動を進めていく必要があるといえます。
難解な研究をいかに発信するか
大学における広報活動の目的は、➊入学志願者を集める ➋研究成果を発表する ➌ブランディングの3つに大別できます。PR TIMESで配信されている大学のリリースのテーマを分析すると、多い順に「研究成果」「イベント告知」「産学連携の取り組み」「学生活動の成果」となっています。リリース配信では、主に➋と➌を目的としている大学が多いことが分かります。
では、実際に反響のあったリリースを見ていきましょう。Facebookで2600以上の「いいね!」を獲得したのが千葉大学の「2040年の全国の各市町村の姿が一瞬でわかる『未来カルテ』無料ダウンロード開始」(2017年10月30日配信、CASE1)。「未来カルテ」とは、「人口減少や高齢化が今の状態のまま継続すれば、2040年にどうなるのか」を地域ごとに調べることができるプログラムです。読み手が能動的に参加でき、研究結果を自分ごととして考えることができるため、SNSで波及したのです …