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広報担当者のためのマーケティング発想再入門

「マーケティングPR」目標設定の方法

片岡英彦(東京片岡英彦事務所 代表/企画家・コラムニスト・戦略PR事業)

マーケティング活動の一環としてPRを行う「マーケティングPR」。筆者の実務経験をもとに、基本と実践のポイントを解説します。

マーケティングPRに関する議論で、クライアントから特に多い相談が「目標設定」と「効果測定」についてである。最近は販売促進に限らず、企業経営のあらゆる面においてPR(Public Relations)の視点が求められるが、中でもマーケティング活動の一環としてPR活動を行う「マーケティングPR」の場合、施策を売上や集客数の増加に直結させる必要がある。PR部門としての投資額が大きくなるケースも多い。このため入念な「目標設定」は欠かせない。また、施策の後には綿密な「効果測定」も求められる。

しかし、このマーケティングPRと目標設定・効果測定の話は、社内でもPR部門内でも不毛な議論に終わることが多い。この「不毛な議論」の繰り返しによって、マーケティングPRを行う部門と他部門、時に経営者との間で不信感が生じてしまう現場を何度も目にしてきた。なぜ常にこのミスコミュニケーションは生じてしまうのか。

PR部門にありがちな「悪癖」とは

自戒の念も込めてあえて厳しいことを言う。PR部門には長年にわたる「悪癖」と「甘え」が存在すると私は考えている。それは「掲載が事前に確約されない」(掲載するかどうかの決定の権限は媒体社が持つ)ということから生じる、ある種の「甘え」である。

確かに「純広告」とは異なり「PR」の活動結果(フリーパブリシティ)であるメディア上での露出については、媒体社側が最終的な掲載の可否(掲載内容や分量を含む)の決定を行う。PR部門は「掲載していただく」という立場だ。

この「掲載していただく」という「アンコントローラブル」な活動がPR部門の醍醐味でもあり、工夫のしどころだと私は思っている。同時に「お金を払えば必ず掲載されるわけではない」ということから、とかくPR担当者には「掲載に至らない場合はしょうがない」(ムリなものはムリ)という「甘え」が生じることも自ら体感してきた。

PR部門において「理想の結果」という「努力目標」については容易にイメージできる。目標設定も行いやすいが、営業や広告部門のような「最悪の場合」であっても絶対に達成すべき「必達目標」はどうにも立てにくい。「お願いをしたからといって掲載されるとは限らない」というのは、おそらくPR部門が社内の他部門に対して最も多く使うフレーズではないだろうか。

努力目標から「必達目標」の設定へ

PR部門の構造的ともいえる「悪癖」をどう乗り越えていくか。これが社内の部門を進化させるカギになる。どうすれば「コミット」できるPRへと進化させられるだろうか。手法としては❶パブネタ(トピック)強化という目標設定 ❷「拡散強化」に何ができるか、という2つが考えられる。「パブネタ」の強化と同時にPR部門は「露出拡大」を行わねばならない。

PR部門の活動が制約されるひとつの大きな要因は、すでに商品・サービスが決まっているので「パブネタ」を変更できないという点である(図1)。既存の自社の商材を前提に考えるとネガティブなスパイラルの視点になりがちだ …

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