オンラインの情報流通構造が複雑化し、広報の手法も変化しています。全12回シリーズで、デジタルPRの基本と戦略に活かすヒントを専門家がお届けします。
今回のポイント
(1)調査レポートを活用したリリースを出すのも一手
(2)顔が見えにくいからこそ事業の背景や思いを表現
(3)社会の信頼獲得のための情報開示が求められる
一般に広報活動が難しいとされているのが、いわゆるBtoB(法人向け)ビジネスを事業の主体とする企業です。結果的にエンドユーザーと結びついている事業も多いですし、BtoBとBtoCの両方を手がけている企業もあるのですが、その実態は一般生活者には見えにくいもの。知名度やブランド力に課題を抱えているケースも多いのではないでしょうか。
特によく聞かれるのが「既存のビジネス上の取引、お付き合いのなかでコミュニケーションをしておけば十分」という声です。ここで注意しておきたいのが、企業への評価は顧客だけでなく、多様なステークホルダーによって成り立っているということ。上場企業であれば株主、将来の会社を担う人材確保という観点に立てば学生も重要なステークホルダーなのです。
今や、ステークホルダーは能動的に情報を取りに行くことができるようになっています。投資家にせよ学生にせよ、情報を開示していない会社には見向きもしません。仮になんらかのきっかけで興味を持ったとしても、パブリックな場所に情報がなければ投資対象や就職先・転職先の候補に入れてもらうこともできないのです。
経営情報や調査レポートを配信
PR TIMESで配信されているBtoB企業あるいはBtoB事業のプレスリリースに絞り込んで内容を分析してみると、「商品・サービス」「イベント」に関する割合が高くなっています(BtoB以外を含む全体を見てもこの2カテゴリは多いです)。なお、BtoB分野のリリースに限ると「経営情報」「調査レポート」の比率もやや高めになっています(2018年9月に配信されたリリースの場合)。
BtoB分野の場合は「ニュースとしてメディアに取り上げてもらえるような情報がない」という声がよく聞かれますが、利用企業の皆さんからは「商品やサービスなど、会社の取り組みをストックとして残しておける」「メディアで取り上げられなくても、ステークホルダーへの情報の広がりを見える化できる」といった意見をいただくことがあります。
例えば経営情報に関して、出資や増資に関する話題をリリースとして配信した場合。Facebookなどを通じて関係者間でシェアされることで、会社の勢いをアピールすることができます …