この世には「バカ」がつくほど愛される、PR上手な商品・サービスがある。そんな「PRバカ」と呼べる存在を求めて、筆者が仕掛人を訪ねていきます。

(右)フィールズインターナショナル アンタイトル SP/PR 宮宇地 健さん
(中)キャンドルウィック アカウントディレクター 橋爪 薫さん
(左)商品開発コンサルタント 美崎栄一郎(筆者)
File:10 フィールズインターナショナル「走れるスーツ」

2018年の秋に発売した「フィールズパフォーマンススーツ」。ジャケットは2万9500円、パンツは1万8500円(いずれも税別)から。
広報会議の編集部から、「表参道でスーツを着て走るイベントがありますが、見に行きませんか?」というお誘いがありました。
プレスリリースを読んでみると、ワールドグループのフィールズインターナショナルが展開するアパレルブランド「UNTITLED(アンタイトル)」がこの秋発売した機能性スーツ「フィールズパフォーマンススーツ」のPRイベントでした。
リリース自体はファッション業界でよくある形式に見えたのですが、私が気になったのは、「ポリジン社の技術によって汗をかいても嫌なニオイが発生せず、清潔を保つことができる効果がある」とサラッと書いてあったことでした。
ニオイって言葉や映像では伝わらないですよね。広報しづらいことがど真ん中にある場合、どうやってPRするのでしょうか。
スウェーデンの薬品会社が起源
まずはポリジン社について、恥ずかしながら私は知らなかったので少し詳しくご説明します。ポリジン社は、スウェーデンに本社を置く大手薬品会社Perstorp社から2006年に独立した会社です。そして10年後の2016年には上場しています。
ポリジン社が開発した抗菌防臭技術は、銀イオンの働きでバクテリアの増殖を抑制するというものです。汗自体は本来無臭なのですが、水分や温度によって生地表面でバクテリアが増殖することでニオイが発生します。人の汗を止めるのではなく、ポリジン加工した繊維でバクテリアの増殖を抑制するため、汗が出ても嫌なニオイの発生を防ぐことができます。
また、リサイクルした銀を使うので環境に優しい。ニオイが抑えられることで、無駄なクリーニングを減らすことができるため、さらに環境に優しくエコであるという認知が広まり、ヨーロッパではすでに普及しているようです。ただ、日本ではまだブランドが浸透しているわけではありません。
日本では2016年秋から本格的なポリジンマークのPR活動を開始したとのことでした。これが浸透すれば、防水透湿性素材=ゴアテックス、防寒機能=ヒートテックのようにブランド化が実現するわけですが、個人的な予測ではニオイはハードルが高そうです。さぁ、どうするんだろう?では、まずはイベント当日のレポートです。
テーマは「体感と共感」
9月29日、台風と台風の間のギリギリのタイミングで小雨が降る中、PRイベントは行われました。アンタイトルブランドのスーツ姿の女性が50人以上、表参道のワールド北青山ビルから走り出す姿は壮観です。この日のイベントの様子は次世代クリエイターとしてYouTubeなどでも映像を配信している山下歩さんが撮影班として入っていました。どうなることかと思って見ていましたが、雨の中イベントは無事終了しました。
イベントの最中、ポリジン社の技術の話はするけれど、あまりニオイについて余計な訴求はしていません。それでも、終わったあとネットで検索すると、ニオイが抑制されていることに関してしっかり言及した投稿もアップされています …