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危機管理広報2019

スルガ銀行の不正融資「社風と企業ガバナンスの問題」を考える

植村修一(元日本銀行審議役・元大分県立芸術文化短期大学 教授)

スルガ銀行の不正融資で注目される、社風(企業風土)とガバナンスの問題。本稿では銀行界の問題や多発する日本企業の不祥事の背景を探りながら、今、企業における「広報」が果たすべき役割にも触れていきたい。

問題の経緯

5月15日


スルガ銀行(静岡・沼津)の米山明広社長(当時)は5月15日、不正融資に関して初めて会見を開いた。スマートデイズ(旧スマートライフ)のシェアハウス「かぼちゃの馬車」への投資の融資に関して資料改ざんなどの不正が相次いだ。多くの行員が不正を認識していた可能性があるとして謝罪したが「詳細については第三者委員会の調査に委ねる」として、銀行の不正に言及することはなかった。


近年、日本企業における不祥事が後を絶たないが、2018年に特に話題となった問題のひとつが、スルガ銀行の不正である。

銀行の不正といえば、1990年代に入ってバブルが崩壊したのち、土地投機を巡る不適切な融資、偽造預金、浮き貸し、総会屋への利益供与など様々な事件が明らかになり、世間の指弾を浴びた。加えて、不良債権問題の深刻化から多くの銀行の経営が困難となり、破綻や再編、公的資金注入など、日本経済を揺るがす事態となった。

ここ10年は、欧米の銀行がリーマン・ショックに見舞われる一方、国内の金融システムは安定化し、個々の不正は起きても、その程度や広がりは限られたものであった。それだけに、今回のスルガ銀行の問題は、バブルとその崩壊期を思い起こさせる意味で、デジャヴ(既視感)となった。

加えてスルガ銀行の場合、横並び意識が強い金融界で、かねてより先進的かつユニークな経営で知られた存在でもあった。特に最近は、低金利と資金需要の低迷で銀行収益が低迷する中、ひとり気を吐く好業績をあげ(今では不正によって嵩上げされていたことが判明)、当局からも注目される存在であった。それだけに、今回の事件は、単なる個別行の問題を超えて、業界全体が置かれた苦境を、改めて浮かび上がらせるものとなった。

多数の行員の不正関与が発覚

まずスルガ銀行による不正の概要と経緯を振り返ってみよう。発覚のきっかけは2018年に入り、女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」を運営するスマートデイズ社の、物件所有者への賃料支払いが滞っていることが広く知られるようになったことだった。同シェアハウスに投資するのは、主に会社員を多く含む一般人であり、彼らは、建設資金の大半をスルガ銀行からの融資に頼っていた。

このため、シェアハウス問題は所有者と銀行とのトラブルに発展し、金融庁が実態把握に乗り出したと報じられる。4月にはスマートデイズ社が民事再生法適用を申請し、事実上倒産した。その直後から金融庁はスルガ銀行に対する緊急の立ち入り検査を開始し、この間市場では、同行の株価の下落が続いた。

スルガ銀行が問題視されたのは、単に融資が焦げ付いて同行の収益に影響が出ることが懸念されたためではない。融資の過程で審査書類などが改ざんされ、それに多くの行員が関与したのではとの疑念が強まったためである。

5月中旬、スルガ銀行は2018年3月期決算において、シェアハウス関連融資に絡む貸倒引当金を積み増すとともに、相当数の行員が不正を認識していた可能性があるとの調査結果(危機管理委員会)、および徹底調査のための第三者委員会設置を明らかにした。

9月に公表された第三者委員会の報告書で示されたのは、投資家の資産や物件の収益性に関する様々な偽装工作と、それに多くの行員が関与(少なくとも黙認)していたとする、驚くべき実態であった。これを受けて、トップを含む経営陣の交代が行われ、さらに10月、半年間の新規投資用不動産融資停止を含む、金融庁の処分が下された。

また、同行が11月に発表した2018年4~9月決算では、985億円の最終赤字となった。

第三者委が不正の原因を指摘

第三者委員会報告書において、まず問題の原因とされたのが、審査体制の不備である。当初からシェアハウスローン特有のリスクが十分に考慮されていなかったばかりか、これに関する「気づき」が組織内で共有されていなかった。また個別案件に関し、ほぼ常に審査部門の意見が営業部門の意見に押し切られるなど、銀行としてはあってはならないことが常態化していた(収益不動産ローンの承認率は99%超)。

その営業部門では、高いプレッシャーとノルマが課された結果、効率性重視の観点から、案件組成の業者(チャネル)への過度な依存と極端な形式主義(書類さえあればいい)に陥り、不正が蔓延するもととなった。様々なパワハラの実態も明らかにされている …

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