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危機管理広報2019

日大アメフット部に続いたパワハラ告発 大学にも「守備」の広報体制を

石渡嶺司(大学ジャーナリスト)

日本大学アメリカンフットボール部による悪質タックル問題をきっかけに、学生スポーツにおけるパワハラや暴力事件などの告発が続いた。「大学広報の体制整備が急務」という教訓を突きつけた2018年を振り返る。

問題の経緯

5月23日



5月6日、関西学院大学と日本大学のアメリカンフットボールの試合で悪質なタックルによる反則行為があった。その動画がSNSなどで拡散され、やがてテレビなどでも報じられるように。同19日、日大の内田正人監督が関学に謝罪へ行き、空港でぶら下がり会見を開くも不誠実さを露呈。22日にはタックルをした加害学生が単独で会見を開き、日大にさらなる批判が殺到。翌23日に内田監督と井上奨コーチが会見を開くも釈然とせず、司会の広報担当が逆ギレするなど騒動は最高潮に達した。



2018年ほど大学が注目された年はない。これは私個人のメディア出演回数にも影響している。

私は2003年から現在の肩書である「大学ジャーナリスト」として活動してきた。同年以降、現在までに大学・就職関連の本を28冊、刊行している。そんな私がテレビ出演する機会といえば、2017年までは年3~4回程度だった。それも、パネルを使った解説の場面でコメントの一部が引用される程度でしかない。それが5月に日本大学のアメフット騒動が起きてからはニュース番組やワイドショーからの出演依頼が殺到。5月から8月までに約100本、出演した。生出演だけでも60回は超えた。

もちろん、大学ジャーナリストという分かりやすい肩書が影響したことは否定しない。それにしても、大学がそれだけ世間から注目されたことは確かだ。私が出演していない日でも、大学関連の特集が組まれ、あまつさえ、騒動とは無関係の問題(例えば非常勤講師の雇い止め)が対象となっていた。それがまた高視聴率だったと番組スタッフから聞いたときにはそこまで関心が高いのか、と戦慄さえ覚えたものだ。

大阪大学と至学館大学の違い

2018年の上半期は年初に大阪大学の入試採点ミスが注目された。その後、3月には至学館大学の女子レスリング部におけるパワハラが表面化した。

大阪大学の方は新聞の社会面、教育面ではしばらく記事となる。その後、大学側が陳謝、不合格扱いの受験生を追加合格とするなどしたため、それほど騒がれないまま、収束していった。

一方、至学館大学のパワハラ騒動は現役の選手、かつ、金メダリストに対してのパワハラであり、注目された。さらに、谷岡郁子学長がパワハラを否定する会見を開き、かえってパワハラが疑われる結果となっている。

この大阪大学と至学館大学の違いは事件・騒動の性質よりはキャラクター性にある。すなわち、大阪大学の場合、予備校からの再三の指摘でようやく採点ミスに気づいた、という対応の悪さはともかく、その後は陳謝や追加合格など必要な手配を粛々と進めていった。記者会見でも広報戦略という点で大きな失点があったわけではない。

その点、至学館大学の場合、学長がわざわざ会見を開いてパワハラを否定、という時点で広報戦略上は大きな失点である。さらに、学長が、「そもそも伊調さんは選手なんですか?」という迷言を生み出してしまった。ご本人は冷静に話したつもりだろうが、一般人からすれば被害選手側を非難しているようにしか受け取れない。案の定というか、この発言をニュース番組・ワイドショーはことごとく使い放送。それまで、レスリング業界と中京圏以外ではほぼ無名だった至学館大学を悪い意味で全国区にしてしまった。

キャラクターが強すぎた日大

このキャラクター性の強弱、という点で最強と言ってもいいのが日本大学である。日大騒動は5月6日に開かれたアメリカンフットボールの試合で、監督側が選手に反則行為を指示したことに端を発する。試合の動画がネットで拡散されていくうちにスポーツ庁長官が言及、NHKはじめテレビ局も報じるようになった。

ここで早いうちに反則指示をした監督・コーチが記者会見したうえで辞任していれば、それで済んでいたはずだ。ところが「選手の勝手な判断」というストーリーをメディアに提示。一方、収まらない被害選手の親と大学は感情を抑えつつも日大側を非難。ついには、5月22日に加害選手が実名かつ顔を出したうえで経緯を説明、謝罪する。

これで言い逃れができない状況、のはずが、監督・コーチは翌23日に記者会見を開くものの、それでも責任を否定。この記者会見では司会進行役の元メディア幹部が激高するなど、あまりにもキャラクター性の強い人物が日替わりで登場することになった。さらに、日大の田中英寿理事長が騒動後もパチンコをしているシーンが『週刊文春』に掲載されるなど、こちらもキャラクター性という点では強力すぎる …

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