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SNSに危険な「自撮り」を投稿 組織はどう対応する?

鶴野充茂(ビーンスター 代表取締役)

ブログや掲示板、ソーシャルメディアを起点とする炎上やトラブルへの対応について事例から学びます。

イラスト/たむらかずみ

危険な「自撮り」にどう対応する?
2018年9月に発表された国際調査で、2011年から2017年の間に自撮り写真のために世界で少なくとも259人が命を落としていることが明らかになった。

インドの研究者が自撮り(セルフィー)による事故死亡者数を米医学誌に発表した。調査によると、2011年から2017年の6年間で259人が死亡していたという(対象は英語で報道された事故のみ)。多くは10代か20代で、その数は増加傾向にある。最も多い死因は溺死、交通事故、落下事故だが、ほかにも動物に襲われる、感電死、火災、銃火器による死亡もあった。

自撮り関連の死者数で多い国はインド、ロシア、米国、パキスタンで、報道されていた死者の72.5%は男性だった。これを組織の広報としてどう受け止めるかというのが、今回のテーマだ。

責任が問われる可能性も

6年間で自撮りによる死者が259人だったという事実の受け止め方には、人によって差があるだろう。しかし、以前はなかった新たな問題であることと、その数が増加傾向にあることにまず注目したい。

自撮りの多くはSNS投稿を意図した撮影であり、SNSやスマホの普及にリンクする形で増加してきたことを考えると、少なくとも当面は減少傾向に転ずることは考えにくい。そして、調査ではカウントしていない重軽症や、一歩間違えば重大事故になる可能性があったものなどの存在を考えると、決して軽視できない数だ。

また、SNSの性質上、投稿には「いいね!」やシェアなどの反応を期待して、より見た目のインパクトの大きい写真を撮ろうとする傾向が生まれやすい。つまり時間を追って過激化しやすいということだ。ここ数年、高層ビルの屋根に上って写真を撮る「ルーフトッパー」と呼ばれる人々や、大都市で地下鉄などの立ち入り禁止区域に入って撮影する「アーバンエクスプローリング(都市探索)」という行為が現れたりしているのは、その象徴と言える。

観光地で自撮り棒を利用した撮影を禁止する看板や危険な撮影行為に対して注意を促す駅のアナウンスなど、日常生活の様々な場面で撮影への注意喚起を見聞きする機会は増えているが、それがどれだけ有効な抑制効果を生んでいるかは管理する組織としてしっかり分析しておきたい。この先、大きな事故に発展した場合に、危険を認識しつつも十分な対策を講じなかった組織の責任が問われる可能性がある。

個人の問題から「組織」の問題に

危険行為が行われる場所を管理する組織にとって難しいのは、日ごろからその危険性を認識されている場所ばかりではないことだ。危険を冒してでも写真で反響を得たいという人たちの行為を阻止するという発想が必要になるということである。

すぐに完全な対策を取ることは困難かもしれないが、自撮りによる事故という新しい問題が発生していることについて広く組織内で注意を喚起し、それぞれの管理物や施設がどのような過激な撮影に利用される可能性があるのか想像を巡らせて議論しつつ、最善の対策につなげられるよう、まずは啓発を図りたい。自撮りの事故はこの先、単なる個人の問題では済まなくなる危険性がある。

社会情報大学院大学 客員教授・ビーンスター 代表取締役
鶴野充茂(つるの・みつしげ)

社会情報大学院大学客員教授。米コロンビア大学院(国際広報)卒。国連機関、ソニーなどでの広報経験を経て独立、ビーンスターを設立。中小企業から国会までを舞台に幅広くコミュニケーションのプロジェクトに取り組む。著書はシリーズ60万部のベストセラー『頭のいい説明「すぐできる」コツ』(三笠書房)など多数。個人の公式サイトはhttp://tsuruno.net

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