記者会見や企業取材など、日々ニュースの「現場」からリポートするフィールドキャスター。感極まる歴史的瞬間の取材から身体を張った体験取材まで、様々な現場を経験してきた須黒清華さんが、印象に残っているエピソードを語る。

【月・木曜担当】テレビ東京 編成局 アナウンス部 主任『WBS』フィールドキャスター
須黒清華(すぐろ・さやか)
テレビ東京アナウンス部所属。東京都出身。2007年にアナウンサーとして入社。以降、報道、スポーツ中継、バラエティなどを幅広く担当。『出没!アド街ック天国』『ありえへん∞世界』などにレギュラー出演。『WBS』では2007年から2009年までトレたまキャスターを務める。趣味はミュージカル鑑賞、旅行、お酒を飲むこと。
是枝監督に単独インタビュー
──須黒さんは過去にトレたまキャスターを2年半務めていましたが、2018年4月から再びWBSに戻ってこられました。この半年間のフィールドキャスターとしてのお仕事で、特に印象に残っている取材はありますか。
映画監督の是枝裕和さんへの単独インタビューです。映画『万引き家族』がカンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールを受賞した直後にお会いすることができ、5月28日には「カンヌ 是枝監督単独取材 動画配信VS映画業界」と題して放送しました。
このタイトルからも分かる通り、インタビュー内容は、WBSならではの切り口になるよう工夫しました。作品のお話以外に、今年のカンヌで「映画館で上映しない作品は映画ではない」としてNetflixの作品が締め出された件について意見を伺いました。
実際の放送では、日本で映画館が減少している実態や生き残り戦略についても取材し、是枝さんのインタビューと組み合わせることでWBSならではのニュースになりました。
WBSの取材では「社会」や「経済」といった視点だけでなく、企業や商品・サービスを消費者の目線で捉えることも大切になります。普段から様々なものに触れて、「ほかの商品と比べてどうなのか」「実際に生活に取り入れるのならどこを改善した方がいいのか」などと考える癖をつけ、コメント力を磨きたいと思っています。
バラエティではほかの出演者の意見を聞いてうまく吸い上げる役割を担っていますが、報道・経済番組では自分の意見をきちんと言うことが求められるので、難しさも感じています。
──7月に起きた西日本豪雨で被害を受けた旭酒造にも、WBSならではの切り口で取材をされていましたね。
8月2日放送の「"獺祭"65万本が豪雨被害!味の変化を逆手に新ブランド!?」ですね。災害の際は被災状況を伝えるだけでなく、経済にまつわる動きを追うのもWBSの役割です。
同日に行われた旭酒造の記者会見では、豪雨被害の影響で味が変化してしまった日本酒「獺祭」を、新ブランド「獺祭島耕作」として発売するという発表がありました。私はこの会見で、桜井博志会長と桜井一宏社長が「獺祭のブランドを捨てるしかない悔しさはあるけれど、焼け太りを目指して頑張ります!」と前向きにお話される姿を目の当たりにして、復興へと向かう大きなエネルギーを感じました。
厳しい質問の聞き方に迷い
──広報会議の読者調査では、「もっと取材に来てほしい」という声もありました。須黒さんが取材に出るのはどのような話題が多いですか。
ありがとうございます!私たちフィールドキャスターが取材に行くのは、実際に見たり触れたりできるものがある場合が多いですね。
また、経営者や社員の方にインタビューをしてコメントを引き出すのもキャスターの役割です。私は、世界卓球選手権や冬季オリンピックなどでスポーツ関連の取材を担当することが多かったのですが、報道番組の取材は全然違うので、いちから勉強しています。
苦労するのは、厳しい質問や聞きづらいことを聞かなくてはならない場面。ディレクターに「これ聞いてください」と言われても、「聞き方を考えないとな……」と迷ってしまいます。アスリートは取材慣れしているので聞きやすかったのですが、WBSの取材対象者は慣れていない方が多いので、雰囲気づくりや質問の仕方を工夫しています。広報の方とは、普段から良い関係を築いておくのが理想です。
──今後、取材してみたいテーマは。
スポーツ取材を経験してきたこともあり、2020年の東京オリンピック・パラリンピックには注目しています。この歴史的なイベントに向けた経済界の動きを追うだけでなく、"経済"を切り口にしたスポーツ取材ができたらなと思います。
また、ミュージカルが大好きなので「エンターテインメントをもっと日本に浸透させたい」という野望があります。最近は少しずつ動きもあり、例えば渋谷では"文化発信基地"としての取り組みが盛んです。6月には古典芸能から現代文化までを発信するイベント「第5回SHIBUYAルネッサンス」なども開催されていました。このような取り組みをしている団体や地域は、ぜひ取材をしてみたいです。
Q 大変だった取材は?
A クライミングで筋肉痛に
「横浜・八景島シーパラダイス」の屋外クライミング「ロックンロック」の取材(2018年7月13日放送)です。10メートル近く登ったものの、撮影のために身体を止めているのがとても辛くて……。翌日は筋肉痛になりました。身体を張る取材は、取材チームで協力し合いながら楽しく乗り越えたいと思います。