2018年8月に放送600回を迎えたトーク・ドキュメンタリー『カンブリア宮殿』。初期の立ち上げにも携わった桧山岳彦氏が7月にチーフ・プロデューサーに就任した。ひとつの企業を掘り下げ、1時間分の"ストーリー"をつくる方法を解説する。
2006年に『ガイアの夜明け』に続く日経スペシャル第2弾として誕生した『日経スペシャル カンブリア宮殿~村上龍の経済トークライブ~』。毎回"日本経済を支える経済人"をスタジオに迎え、小説家の村上龍さんと女優の小池栄子さんがインタビューをする経済番組だ。
最高視聴率は「コストコ」
2018年7月にチーフ・プロデューサーに就任した桧山岳彦氏は、「"こんな企業努力があったのか"と新しい発見をするとともに、明日からの仕事の活力にしてほしい」と話す。
ビジネスパーソン向けを意識して制作しているものの、女性やシニア層の視聴率が高いため、スーパーや飲食店など"身近な経済"をテーマに設定することも多い。例えばコストコ ホールセール・ジャパンのケン・テリオ社長が登場した「ニッポンの"買い物"を変えた小売業界の覇者!~知られざるコストコの裏側を徹底解剖SP~」(2017年9月7日)。主婦層に人気のある"コストコ"をテーマにしたことで、この年の最高視聴率を記録した。
さらに、日世の岡山宏社長を迎えた「唯一無二!ソフトクリームの王者 強さの秘密」(2018年9月6日)の回は、子どものころにソフトクリームブームを経験したシニア層(特に男性)の視聴率が高かった。
1本のストーリーをつくる
毎回の放送で取り上げる企業は、番組スタッフが探す場合と制作会社の企画を採用する場合がある。どちらの場合も判断基準は「1時間かけてじっくり伝えるだけの内容があるかどうか」である。
桧山氏は「魅力のある企業はたくさんあるのですが、その中でも深く掘り下げられるだけの歴史があったり、様々な切り口を持っていたりする企業を見つける必要がある」と話す。番組では、最終的に1本のストーリーをつくって伝えるためだ。
例えば、2018年8月30日に放送した、タオルブランド「エアーかおる」を展開する浅野撚糸。岐阜県安八町にある社員数18人の中小企業だが、壮大なストーリーを持っていた。
かつて撚糸製造の下請け企業として成長してきた同社は、2000年代に入ると安価な中国製糸が流通した影響で売上が3分の1以下に減少。倒産の危機が訪れたものの、2代目社長の浅野雅己氏がオリジナルのタオルを開発し、大逆転を果たした。実際の放送では、このストーリーを再現ドラマに仕立て上げた。
こういったストーリーは必ずしも取材前の段階で確定しているわけではない。取材班が何度も下調べをして、気になる話を集めていくのである。桧山氏は「実際に現場でお話を聞いていると、その企業の方も気づいていないような魅力を発見することもあります」と語る。取材班の動きに合わせた臨機応変な広報対応も求められるのだ …