プライムタイムの経済3番組の中で最も歴史のある『ガイアの夜明け』。2018年度は「独自報道」に力を入れ、他メディアに先駆けたスクープも連発してきた。チーフ・プロデューサーの野田雄輔氏に番組の歴史や企画が生まれるまでを聞いた。

"案内人"を務めるのは俳優の江口洋介。スタジオでの解説、現場での取材(一部)、一人芝居を担当する。
テレビ東京では2018年4月に「"働く人応援"宣言」を発表し、平日午後10時から11時の枠で4つのビジネスプログラムを放送している。月曜日は同月に新設された「ドラマBiz」枠で、10月からは唐沢寿明主演のドラマ『ハラスメントゲーム』がスタート。さらに日経スペシャルの『ガイアの夜明け』(火曜日)、『未来世紀ジパング』(水曜日)、『カンブリア宮殿』(木曜日)の報道3番組が続く。
この中で最も長い歴史を持つのが2002年に放送開始した『ガイアの夜明け』。当時の立ち上げメンバーは、現コンテンツビジネス局長の福田一平氏や報道局チーフプロデューサーの大久保直和氏など、現在のテレビ東京の中核を担う面々だ。
番組で扱うのは、企業のプロジェクトや新商品開発の裏話。素人を追いかけてドラマを描く、テレ東らしい経済ドキュメンタリー番組だ。当時、"経済"を深掘りして面白い番組をつくるという手法は他局にはない画期的なものだった。
「違法建築疑惑」が明らかに
ただ、『ガイアの夜明け』の成功とともに、他局でも"経済"に焦点を当てた番組が増加。2017年7月からチーフ・プロデューサーを務める野田雄輔氏は「しだいにガイアのスタイルがマンネリ化してきました」と振り返る。視聴者層も国民の高齢化に伴って40~50歳代から60歳代以上にシフト。より多くの視聴者を獲得できるような番組づくりが求められるようになった。
そこで2018年度からは、「独自報道」要素を加えた「経済×報道×ドキュメンタリー」番組としてリニューアル。当たり前だと思われている事象の裏側を取材し、光と闇を浮き彫りにすることを意識している。
そのひとつが2018年5月29日に放送した「スクープ!レオパレス21"違法建築"疑惑が発覚」。取材班が賃貸アパート大手・レオパレス21の内部文書を入手し、1994年に販売開始した約1000棟の木造アパート「ゴールド・ネイル」に防火壁が設置されていないことを明らかにした。居住者の安心・安全を脅かす「違法建築疑惑」のスクープである。
レオパレス21に関しては、2017年12月26日にも「追跡!マネーの"魔力"」の中で取り上げている。当時、家賃収入の減額の取り消しを求める集団訴訟が相次いでいたことを受け、同社の深山英世社長に取材。さらに、「解約を前提とした交渉を行うことを指示した」と読み取れる社内メールを独自に入手し、突きつけたのだった。この取材が防火壁のスクープにつながった。
SNSなどで大きな話題となったこのスクープだが、野田氏は「我々は企業いじめをしたいわけではない。不正を追及することで、視聴者の方々にとってプラスになればという想いでやっている」と話す。
数年越しの継続取材も強み
『ガイアの夜明け』の特徴として、長期にわたって取材を続けるシリーズものがある。そのルーツは2002年5月にスタートした「農村少女シリーズ」。高度経済成長に沸く中国で、農村から都市部に出て働き、成長していく少女の姿を追い続けたシリーズだ。農村と都市の格差をリアルに捉えた企画だとして、2005年には「民放連 テレビ報道番組優秀賞」「ギャラクシー賞・奨励賞」などを受賞した。
最近では、2016年11月22日放送から始まったバターにまつわる「巨大規制の闇」を探るシリーズが話題を呼んでいる。2018年8月14日には第3弾として「巨大規制に挑む!~バターの闇 新たな戦い~」を放送。この回では、酪農家と乳業メーカーの仲介を担うホクレン農業協同組合連合会の酪農部部長の発言内容が波紋を呼び、ネット上でも多くの議論が巻き起こった。
野田氏は、「今回の放送では、"今の消費流通システムは本当にこのままでいいのだろうか"と問いかけをしたかった」と語る …