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テレビ東京 大特集

WBS大江キャスター「広報の皆さんと『腹を割って』お話したい」

テレビ東京 報道局 ニュースセンター キャスター
『WBS』メインキャスター 大江麻理子

2018年4月に30周年を迎えたテレビ東京の『WBS(ワールドビジネスサテライト)』。番組を支える「顔」として日々新鮮なニュースを伝える大江麻理子キャスターに、取材の裏話から『広報会議』読者の気になる疑問まで、真摯に答えていただいた。

テレビ東京 報道局 ニュースセンター キャスター
『WBS』メインキャスター 大江麻理子(おおえ・まりこ)

福岡県出身。2001年にアナウンサーとして入社。同年から7年間『WBS』を担当したほか、『出没!アド街ック天国』『モヤモヤさまぁ~ず2』『田勢康弘の週刊ニュース新書』、ポッドキャスト番組『日経ヴェリタス 大江麻理子のモヤモヤとーく』などに出演。宇宙好きのため『宇宙ニュース』も立ち上げた。2013年にニューヨーク支局に赴任、『Newsモーニングサテライト』のNYキャスターを務めた。2014年春から『WBS』6代目のメインキャスター。

「独占取材」の裏に広報の力あり

─スタジオを飛び出して取材に出ることも多いですが、企業広報との連携が求められる場面で、特に印象に残っている出来事はありますか。

たくさんあるのですが、中でも強く印象に残っているのは2017年10月2日に特集を放送した「アスクル」の取材です。この年の2月16日、埼玉県三芳町にある同社の物流倉庫で大規模な火災が発生し、大きな話題となりましたよね。出火原因はフォークリフトのエンジンルーム内に入り込んだ段ボール片で、12日間も燃え続けた結果、東京ドーム1個分の面積が焼失してしまいました。

そんな未曾有の火災だったにもかかわらず、アスクルは10月2日、出荷量が火災前の水準まで復活したとして「完全復活」を宣言しました。WBSでは、火災発生から完全復活宣言までの約7カ月間に密着し、物流復活と防災強化に挑む姿を独占取材しました。

この特集は、アスクルの広報の方のお力なくしては成り立ちませんでした。実際に私がヘルメットにマスク姿で火災現場に入り、レポートするという大変貴重な機会もいただいて。

倉庫に入ってみると、1階は損傷が少なくてまだまだ使えそうな印象でした。2階以上については、商品やコンベアなどが激しく燃えた跡があって、凄惨な状況となっていました。カメラだけでなく、私が実際に現場に足を運ぶことができたので、「臭い」なども伝えることができ、視聴者の方にもリアルに感じていただけたかなと思っています。

実は、当時はまだ消防の確認作業が続いている段階で、確定したことも言えない状況だったようなのですが、広報の方が各所と調整し、特別に撮影を許可してくださったんです。この対応にはとても感謝しています。

─火災現場の状況だけでなく、その後の復活に向けた全社的な動きも追いかけていましたね。

そうですね。今回の特集のポイントは、「復活に向けた動き」にありましたので。そのひとつが、2017年7月6日に発表があったセブン&アイ・ホールディングス(HD)との業務提携です。火災のニュースを知った同社の井阪隆一社長が、以前から知り合いだったアスクルの岩田彰一郎社長に火事見舞いの連絡をしたことがきっかけだったそうです。

また、新たな物流拠点として、まずは4月に「ASKUL Value Center 日高」(埼玉県日高市)、9月には「ASKUL Value Center 関西」(大阪府吹田市)を設立しました。どちらの倉庫でも、大規模火災の教訓を活かして消火設備を増強したほか、火事で電気系統が働かない状態でも防火シャッターが確実に作動するような仕組みを取り入れています。

このように、逆境からスピーディーに復活していく様子は、ビジネスパーソンを中心とした視聴者にとっても何らかのヒントになるのではないかと考えています。

─取材はどのような経緯で実現したのでしょうか。

WBSがアスクルの復活劇に注目したのは、この事故を通じて「eコマースの全盛期」における課題が浮き彫りになったからでした。

近年、eコマースの市場規模の拡大とともに、物流倉庫の巨大化が進んでいます。「倉庫の防火設備の重要性」は今、絶対に伝える必要があるテーマなんです。

そのため、取材依頼時には番組として「報道する意義」をお伝えしました。それを受けて、アスクルの社内でも「どこまで見せることができるか」が議論になったと伺っています。結果的に、こちら側の意向も理解していただき、撮影を受け入れていただくことができました。思い切った決断をしていただきとても感謝しています。

比較されてしまう広報対応

─逆に、残念だと感じた広報対応にはどのようなものがありましたか。

そうですね……いくつか思い当たります。ひとつは、社内の勢力が二分してしまい、双方が記者会見を行ったケースです。

こういった場合、記者は両方の会見に足を運ぶので、それぞれの広報対応を目にします。自然と対応を比べてしまう状況にあるのです。この時は一方の広報担当者がとても統制のとれた動きをしていたので好印象だったのですが、もう一方の広報対応はとても残念でした …

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