日々新鮮なネタを追いかけ、激しいスクープ競争の中で戦う新聞記者と、視聴率を重視し、「画」になるニュースを探すテレビ局の記者。広報担当者は、その違いを見極めてアプローチする必要がある。
新聞記者とテレビ記者は、同じクラブに所属してニュースを追っているという点で仕事内容に大きな違いはない。しかし、文字を中心とした紙メディアと、映像を中心とした放送メディアで、求めるネタの種類や取材の手法に違いが出てくるのは当然だ。今回は経済ニュースを中心に、両者の相違点について説明しよう。
新聞は「社会的な影響」を優先
まず、テレビ記者と一口で言っても、NHKと民放テレビ局では新聞記者にとっての位置づけがかなり異なる。NHKは新聞にとってスクープ競争のライバルだ。媒体は違うが、朝刊と朝7時のニュース、夕刊と正午のニュースは「同じ土俵」とみなされている。実際、新聞記者はライバル紙の朝夕刊に欠かさず目を通すのと同じように、朝・昼・夕のNHKニュースは必ずチェックする。
これに対し、経済ネタに限れば民放は新聞の敵ではない。社会部や政治部はそれなりに競合するものの、新聞の経済部が民放に「抜かれる」ことはほとんどないからだ。筆者の経験でも、民放に抜かれて痛い目にあった記憶はまったくない。日経新聞の系列局であるテレビ東京には2度ほど小ネタを抜かれたことがあるが、調べてみると記事を書いたのは日経からテレ東に出向していた先輩記者だった。
新聞とテレビの記者が競合しないのは、「ゲームのルール」が違うからだ。民放は、新聞やNHKのように「抜いた・抜かれた」のスクープで戦うのではなく、「視聴率」を重視するのである。
筆者が金融担当をしていたころ、ある民放の記者は本社から送られてくる視聴率のグラフを見ながらいつもぼやいていた。彼が出稿したネタが放送されると視聴率が下がるので、上司から小言を言われるのだという。視聴率を稼ぐ芸能ネタや動物ネタに視聴率で負けるたびに、「でも、(番組の主要な視聴者である)主婦が銀行再編のニュースに興味を持たないのは僕のせいじゃないよね」とぼやいていた。
これは新聞と民放でニュース価値の判断基準が違うことを意味する。日本の新聞は戸別宅配率が90%を超えるため、扱うネタによって日々の売上が左右されるということはほとんどない。このため、「社会的な影響が大きいニュース」を優先して載せる傾向がある …