オンラインの情報流通構造が複雑化し、広報の手法も変化しています。全12回シリーズで、デジタルPRの基本と戦略に活かすヒントを専門家がお届けします。
今回のポイント
(1)地方に本社を置く企業のリリース配信が増加
(2)製造業や小売業の新事業展開はニュースになる
(3)知名度がない場合、自社をどう表現するべきか
近年、広報活動が活発化している新分野として、前回は「自治体」のプレスリリース事例を取り上げました。今回は地方に本社を置く会社、そのなかでもBtoBや中小規模の企業を中心に好事例とそのポイントを解説します。
現在、PR TIMESには約2万4000社が登録していますが、そのうち東京以外に本社機能を持つ会社の登録数は約7100社。全体の約3割を占めている状況です(2018年8月現在)。特に2017年度に地方銀行との提携を始めて以降、各地の地元企業に広報の重要性を伝える機会が広がったこともあり、その割合が徐々に増えています。
商圏の拡大はPRのチャンス
特に製造業や小売業の利用が多く、経営者が自らリリースを書いて発信するケースも珍しくありません。利用シーンとしては新製品や新事業の認知を広げたいとき、あるいはそれに伴う商圏の拡大を目指す際に使われる企業が多いようです。例えば銘菓や土産物を扱う店舗が「お取り寄せ」の需要を喚起しようとECを始める場合など、従来の事業を拡大する局面での利用も増えています。
ここからは具体的なプレスリリース事例を見ていきましょう。1社目は、滋賀県守山市にある山豊テグスという1926年創立の歴史ある会社の例です(CASE 1)。同社は釣り糸専門メーカーでありながら、京都市中京区でケーキ店「パティスリー洛甘舎」を営んでいます。代表取締役の母方の祖父が洋菓子の製造・販売に携わっていたことがきっかけで、2015年にオープンしました。このように新事業に進出する際、顧客接点を開拓するためのPRはセットで考えておきたいところです。
(CASE 1)新事業
山豊テグス(滋賀県守山市)
京都「パティスリー洛甘舎」から「西瓜」のお菓子が新発売―「スイカのムース」目と口から涼しい夏をお届けいたします。
(2018年6月27日配信)
もうひとつ、BtoB企業の例として富山県高岡市のフジタを挙げたいと思います(CASE 2)。同社はアルミ鋳造などを手がける金型工場を持っており、その技術力を広く知らせようとクラウドファンディングを使って2017年にアートミュージアムをオープンしました …