企業のビジョンをただ共有するだけで終わりではなく、個々の社員の業務に落とし込むためにはどうすればよいのか。企業・団体の広報責任者らが参加し、ワークショップを交えアイデアを共有した。
「管理職が押さえておきたい 社員のアクションにつなげる、経営方針の伝え方」と題したセミナーが9月26日、産業編集センターの主催で開催された。
第1部は東京都市大学 都市生活学部の北見幸一准教授が登壇。電通パブリックリレーションズ出身でもある北見氏は、実務と研究、両方を経験している立場から、インターナルコミュニケーションによる組織力の高め方について体系的に解説した。
「広報の仕事というと『メディアリレーションズ=社外への発信』というイメージが頭に浮かびますが、ここ2年ほどで社内の活性化が企業の重要テーマになりつつあります。管理職以上と一般社員の間に存在する、経営方針の浸透度合のギャップを埋めることで組織能力が上がる。インターナルコミュニケーションとは、経営そのものなのです」。
では、具体的にどのような施策を行えばよいのだろうか。北見氏によると、インターナルコミュニケーションは「学習」「平等」「トップ」「オフィシャル」「会議」「ルーティン」と、大きく分けて6つの因子で成り立っている。その中でも経営理念の浸透に影響力が強いのは、トップと社員の間に壁がなく、直接意見を言える仕組みがある「トップ」因子、社内報や社内イベントの実施といった「オフィシャル」因子、全社的な会議がある「会議」因子だという。「特にトップと従業員が対話するような場は積極的に用意すべき」と北見氏は話した。
目的は「組織文化」を変えること
第2部では、産業編集センター はたらくよろこび研究所の相山大輔氏のナビゲートのもと、ランチセッションを開催した。企業のビジョンを伝えるための社員参加型の動画や、情報サービス事業を行う企業が災害時に全社一体となって危機を乗り越えたことを再現した社員向け動画の実例を紹介した。
第3部では同じく相山氏が登壇。企業事例をもとに、組織文化を改革するステップやコミュニケーションのポイントをアドバイスした。
「業績が上がっている企業には、経営理念・ビジョンが社員に深く理解され、組織に一体感が醸成されているという共通点がある。この理念の浸透のために社内コミュニケーションの活性化は不可欠」と相山氏。目指すビジョンが明確化されることによって社員一人ひとりが「そのために自分には何ができるか」を考え、業務に落とし込めるようになる。結果的にそれがアウトプットの質向上につながるのだ。
注意しなければならないのは、コミュニケーションを実施しただけで満足してはいけないということだ。目的は「組織の文化」を変えること。相山氏は「公式のルールや個人によってばらつきがある価値観、さらには慣習化された非公式のルールも見直し、良い影響を与え合う組織体制を構築してほしい」と話した。
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