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記者の行動原理を読む広報術

増える調査報道に広報はどう対応する?

松林 薫(ジャーナリスト)

昨今、マスコミ業界でも「働き方改革」が推進されるようになってきた。それに伴い、記者の取材スタイルや記事の方向性も変化しつつある。原稿化のしやすさや、調査報道も視野に入れた広報対応が求められる。

毎日のように報じられる「働き方改革」に関するニュース。しかし、その改革が最も遅れている業界のひとつが、何を隠そうマスコミ業界である。電通やNHKでの過労死問題をきっかけに、取材現場でも深夜や休日の労働時間を短縮する動きが広がっている。その余波がカウンターパートである広報業界に及ぶのは間違いない。今回は、記者たちの働き方の変化に、広報がどう対応すべきか考えてみよう。

締め切りも前倒しに

「最近、夜回りがしにくくなって……」。古巣である日経新聞の記者と会うと、必ずこうした愚痴を聞かされることになる。早く帰宅できるなら喜びそうなものだが、記者たちの顔はどこか冴えない。深夜の取材が規制される一方で、「スクープを取れ」「他社に抜かれるな」という風潮は中間管理職を中心に根強く残っており、ダブルバインド(板挟み)に陥っているのだ。

もうひとつの負担が、締め切りの前倒し。日経新聞では、これまで午前1時台だった最終版の締め切りを早めるための検討が進んでいる。すでに面によっては「深夜に大きなニュースが飛び込んでこない限り、新しい版を起こさない」という方針に変わった。

これに、ネット速報を重視する「ウェブファースト」が拍車をかける。記者からすれば、全体の拘束時間が短くなる一方で、取材や執筆にかけることのできる時間が減るので労働密度は上がっているのだ。

見出しとリード文にこだわりを

広報活動も、こうした変化に合わせていく必要があるだろう。とくにプレスリリースについては、カウンターパートとなる記者(クラブ)の動向を見ながら、文章構成や配布のタイミングを見直すべきだ。

今後は、記者にとっての「処理(原稿化)のしやすさ」が重要になる。そもそも、新商品の発表などは若い記者が担当するケースが多い。会見のテープ起こしなど、雑用もたくさん抱えている世代だ。地方支局などでは、まだ執筆自体に慣れていない新人が担当することも少なくない。こうした記者に記事を書いてもらうには、リリースの「見出し」と「リード(前文)」が重要になる。

見出しは一目見てニュース価値が分かるようにすべきだ …

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