オンラインの情報流通構造が複雑化し、広報の手法も変化しています。全12回シリーズで、デジタルPRの基本と戦略に活かすヒントを専門家がお届けします。
今回のポイント
(1)地元の記者クラブ以外にも情報発信が必要
(2)地方創生で「攻めの広報」への機運の高まり
(3)共感を呼び、応援したくなるコンテンツ発信を
本連載ではこれまでPRバリューの考え方やプレスリリースの表現方法の変化について解説してきました。今回からは以上の内容を踏まえ、「自治体」「中小企業」「BtoB企業」「教育機関」など近年、広報活動が活発化している新分野のプレスリリース事例とポイントを解説していきます。
初回のテーマは、地方創生の波とともに注目が集まる「自治体」の広報です。日本には現在、1700超の自治体がありますが、PR TIMESを利用している自治体の数は279と年々増加傾向にあります(2018年2月末時点)。発信内容の内訳を見ると、観光にまつわる話題が最も多く、移住・定住、ブランディングといったテーマも増えてきました。
従来、自治体の広報活動といえば地元の記者クラブとの付き合いのみで完結していたケースが大半だと思います。ここに「地方創生」の視点が入り、地元以外にも積極的に情報を発信していくことが地域の活性化につながるという認識が浸透してきました。さらにネット上では、発信主体の大小や知名度を問わずニュース価値さえあれば情報が広がる波及効果が期待できます。
そんな背景を踏まえ、今回は小さな村・町の強みを新規事業やニュース価値に転換して話題を生み出した岡山県西粟倉村、福井県池田町の例を取り上げたいと思います。
人口1500人の村が「日本初」
岡山県西粟倉村は2018年6月、新たな資金調達の取り組みとして「人口約1500人の西粟倉村 日本初、地方自治体による地方創生ICOの実施を決定」という内容のリリースを出しました。ICO(Initial Coin Offering)とは、仮想通貨によって投資家から資金を調達する手法のことです。
西粟倉村では「ローカルベンチャー」と呼ばれるスタートアップ企業を積極的に誘致しています。文中には「地方創生ICOを先駆けて取り組むことで、その他の地方自治体においても持続可能で多様性のある地域経済を創出する手段となるように、仮想通貨を活用した地域づくりを推進してまいります」とあります。
このリリースの強みは「日本初」という新奇性、「人口1500人の村がスタートアップとタッグを組んだ」「仮想通貨による資金調達を実施していく」といった意外性にあります …