企業や組織が不祥事を起こした後の信頼回復の過程では過熱報道や二次炎上を防ぐための広報対応が重要。報道を通じて「改革成功のストーリー」を発信するには。
企業や組織の不祥事が相次いで報じられ、広報部門の対応も議論になっている。筆者は記者時代、不祥事を報じるなかで、「それぞれのニュースは一定のエネルギーを持っている」と感じていた。不祥事報道は、そのエネルギーが使い果たされるまで、言い換えると記者たちが「報じ尽くした」と納得するまでは続く。報道の現場では、案件ごとにそうした暗黙の「相場観」が形成されるものなのだ。
そのエネルギーの総量は、ほとんどの場合、広報でも変えることができない。広報は、記者の関心が「発覚➡展開➡対策➡政策➡罰則➡総括……」と移り変わっていくなかで、「炎上の仕方」に影響を与えたり、経営陣などが不要な燃料追加をしないよう管理したりする「信頼回復」が最大の仕事になる(本誌2017年12月号、「アドタイ」2018年5月25日付記事参照)。
起承転結をセットでアピール
企業が「炎上」を経て信頼回復を目指す局面に入ったとき、広報にとって重要なことは何だろう。記者の側から言えば、立て直しに向けたストーリー、言い換えると「泥臭い人間ドラマ」を見せてくれるか、を期待している。
記者という種族は、ニュースを逸話的に描こうとする。これは記者の特殊性というより、読者・視聴者である人間一般が、眼に映る事象を物語で理解する性質を持っているからだろう。古事記などの歴史書をひも解けば、人間が自然現象さえも物語に当てはめて納得しようとしてきたことが分かる。論理的で定量的な説明より、その方が幅広い人に理解され、印象に残るのだ。
記者は一般的に、「改革成功のストーリー」を次のように展開する。(1)立て直しを託された新トップが計画を発表する(2)先頭に立って改革に取り組むが、社内からの抵抗に遭うなど困難に直面する(3)そこでトップは一皮むける(4)そのことで組織の体質や雰囲気が変わり改革が成功する───という流れだ。
トップの部分をスポーツチームのキャプテンや戦闘ロボットを操縦するヒーローに置き換えれば、映画やドラマでおなじみのプロットになる。記者が多用する「起承転結」に当てはまることに気づいた人も多いだろう。それだけ、人々にとって説得力のあるストーリー展開だということだ …