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IRの学校

IR活動の潮流はどこに向かっている?

大森慎一(Japan REIT 社長室長)

広子たちは、9月に少し遅めの夏季休暇を控えている。休暇中、今後のIR活動の長期プランをゆっくり構想しようと考えた広子は、近年のIRへの要請事項の変化を確認しようと、セミナールームを訪れた。


広子東堂:こんばんは。

大森:こんばんは、なんだか相談があるんだって?

広子:そうなんです。延期させられていた夏季休暇を取って南の島に行こうと思っているのですが、その間に、IR担当の長期ビジョンを練ろうと考えてまして。

大森:目下の課題は社外取締役対応だもんね。それにしても、休暇中も仕事?モーレツだな。

広子:基本は充電のための休暇ですよ。ボーッとしようと思って、何のプランも用意せずに行くので。

東堂:広子先輩は、暇に耐えられるわけないですものね。

広子:そうそう。耐えきれないときに没頭できるテーマを持っていると、安心して暇を楽しめるじゃないですか。それで、今後のIR活動の方向性について、何かヒントをいただこうと。

大森:やれやれ、変な理屈だなあ。だけど、ゆっくりできる時間に構想を練るのはいいことかもしれないね。

広子:でしょう?

IRの今のキーワードは?

大森:広子さんは、現状のIR環境の変化をどう感じている?

広子:そうですね。私がこの部署に配属されてから、ここ数年の間にも、次々と新しい制度や規制、キーワードが導入されて、都度その対応に追われて、なんだか消化不良のままですね。

例えば、CSR(企業の社会的責任)が重要と言われていたと思ったら、いつの間にか、ESG経営にとって代わられていて。

東堂:現状のホームページは、ESGを重点的に開示していますが、流行に終わらないかな、という心配もありますね。

広子:働き方改革や健康経営、ダイバーシティ、女性の活躍推進なんていうキーワードも行政の推進もあって注目度が急上昇していますが、実務面の対応が追いつかないので、開示する内容も乏しくなります。

大森:なるほど。企業の社会的責任を果たすための具体的な活動が健康経営などのキーワードで、ESG経営はそれぞれの活動全般を管理するマネージメントだと思うので、変わるというよりは一連の流れのような。

東堂:IRの環境という意味では、投資家との関係性も、迷うことが多くなった気がします。

大森:そうだね。じゃあ、社会環境の変貌を交えて、投資家の環境と上場企業への要請の変化という両面から話を整理してみよう。

投資家の自己責任の実現

広子:待ってました、整理名人!

大森:おいおい。ではIRの黎明期から。ざっくり30年前だね。このころ、上場企業はフォーマットを埋めて開示すればよいという姿勢が強かった。しかも、持ち合いの安定株主をおさえているので、業績という結果責任はあったとしても企業の説明責任を問われることはなく、大きな批判にさらされることは少なかった。その結果、「形式的・画一的」「限定的」な情報開示に留まっていた。

広子:投資家は何を頼りに投資していたのですか?

大森:新聞・ニュースのほか、セルサイドアナリストのレポートや四季報といった雑誌の情報をいかに早く入手するか競っていたね。いわゆる早耳情報や、今だとインサイダー情報に該当するようなような「ここだけ情報」を求めていた。

広子:今じゃ考えられないですね。

大森:そうだね。「投資家の自己責任の実現」が業界の大きな課題だった。

広子:開示が充実しない中、投資家の自己責任を求めても難しいですよね。

大森:いいねえ、その通り。その後、IPO時のグローバルオファリング、新興市場の設立、金融機関の不祥事や金融事件などといったいろいろな事象を契機に、開示のルールや規制が加わっていった。特に過去の実績が判断材料になりにくい新興市場銘柄では「リスク情報」や「対処すべき課題」「MD&A」などが重要とされ、制度開示として充実・定着していった。

広子:任意開示はいつごろから活発に?

大森:そうだね、バブル崩壊や金融危機などを契機に投資家層が金融機関中心から個人投資家、海外投資家へとシフトしていった。グローバル化と個人投資家の台頭だね。

大森:このころから「適時・適切」な開示が特に求められ、「IRの必要性」が高まったんじゃないかな。グローバル化によって、外圧が発生し、新たな規制などが導入される面もあるね …

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