2017年1月から報道企画「2030 SDGsで変える」を始めた朝日新聞社。SDGsに関する数多くの現場を取材してきたSDGs担当記者・北郷美由紀氏がメディアが企業に期待する役割と広報コミュニケーションについて解説する。
「なんだ、またグローバルもの?しかも国連か……」。SDGsと聞いて、そんな堅苦しい印象を持った人も多いと思います。けれどもSDGsは、海外だけでなく国内の状況も改善していく目標です。政府だけでなく、企業人や生活者の一人ひとりが「なすすべ」を持っています。
先日、SDGsについて調べていた高校生からこう言われました。「誰でも主役になれる目標なんだね」。実は、その通りなのです。
「もっと書きたい」SDGs
なかでも、広報担当者はとても大切な主役の一人。広報は「自分たちの会社はこんな会社です。こんなことを目指しています」と発信するのが仕事ですが、そんな広報コミュニケーションにおいて、SDGsは欠かせなくなっています。
世界中が合意した目標のため、自社の「ありたい姿」や「発信したい姿」と関連づけることで、多くの人の共感を得ることができるからです。
それだけに、メディアの注目度も高まっています。朝日新聞社は「ともに考え ともにつくる」という企業理念のもと、SDGsを広めていく責任があると考え、2017年1月から、「2030 SDGsで変える」という報道企画を始めました。SDGsが照らし出している課題を伝え、解決の糸口を探る企画です。「SDGsは新しいものさし」だとして啓発活動をしているキャスターの国谷裕子さんに、ナビゲーターをお願いしています。
取材班でまず取り上げたのは、「自分ごと」として考えやすい食品ロスの問題でした。日本では年に約632万トンの食料が廃棄されています。これは世界で必要とされる食料援助のおおよそ2倍にあたり、約半分は家庭からのものです …