12月に非財務情報に特化した初の「ESG説明会」を行ったオムロン。なぜ今ESGに注目が集まるのか。また、説明会を開催する意義は。広報コミュニケーションの活動に定評がある同社の事例から学ぶ。
「サステナビリティ(持続可能な開発)」という言葉は、1987年に国連の「環境と開発に関する世界委員会」が公表した報告書に登場したことから、広く知られるようになった。近年では、2010年に策定された社会的責任の国際規格 ISO26000や2015年に採択されたSDGsの影響で、企業が経営戦略の中心に据えるべき概念として認識されるようになってきた。
ESGへの注目の高まり
その波は、投資家や生活者といったステークホルダー側からも押し寄せている。オムロンで広報・IR部門を統括する井垣勉氏(執行役員・グローバルインベスター&ブランドコミュニケーション本部長)は「2015年以降、社会が求める情報が大きく変わってきています」と指摘する。
企業が公開する情報について、商品やサービスなどの「ファクト」(財務情報)だけでなく、非財務情報も含めた統合的な情報が求められているのだ。特に機関投資家の間では、企業が長期的に成長するためには「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(ガバナンス)」の3つの観点が必要だとする「ESG」の考え方が注目されている。
このような時流を踏まえ、オムロンでは2017年12月27日、初となる「ESG説明会」を開催。年末の忙しい時期にもかかわらず、報道関係者やアナリストなど、ESG領域の専門家やオピニオンリーダーら165人が集まった。開催後はストレートニュースだけでなく関連報道が多数あり、他にもアナリストレポートが5本出るなど、予想を超える大きな反響があった。
非財務目標をどう伝えるか
国内ではまだ実施例の少ない「ESG説明会」。その内容はどのようなものだったのだろうか。井垣氏は説明会の目的について「オムロンのサステナビリティへの取り組みを紹介し、その背景にある経営戦略を理解してもらうことだった」と話す。
話の中心になったのは、新中期経営計画「VG2.0」内で設定した「サステナビリティ課題と主な非財務目標」。2030年の持続可能な社会づくりを目指すSDGsから逆算し、2017~2020年度の目標として取締役会で決定したものだ。サステナビリティ課題としては(1)事業を通じて解決する社会的課題 (2)ステークホルダーの期待に応える課題の2つを掲げ、それぞれに達成すべき非財務目標を紐づけている(図表1)。
課題(1) 事業を通じて解決する社会的課題
目標●ソーシャルニーズへの対応
ファクトリーオートメーション/ヘルスケア対策/交通事故の削減/再生可能エネルギーの普及
課題(2) ステークホルダーの期待に応える課題
目標●人財マネジメント
人財育成/ダイバーシティ/従業員の健康/労働安全衛生/人権の尊重と労働慣行
目標●ものづくり
製品安全・品質/温室効果ガス排出量の削減/化学物質の管理と削減/サプライチェーンマネジメント
目標●リスクマネジメント
誠実で公正な事業活動/情報セキュリティ
説明会はこれらの課題に基づいて構成 …