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企業ブランド再構築 プロジェクトの進め方

ブランドの持続的成長の核となる明瞭な「企業理念」の重要性

インターブランドジャパン 中村正道/出張光高

ブランド価値ランキングを毎年発表しているインターブランド社。持続的に成長している企業と、そうでない企業は何が違うのか。各企業ブランドが持つ「理念体系」に着目し、その傾向を分析する。

インターブランドジャパンは、2008年に端を発したリーマン・ショックが日本経済に深刻な影響を及ぼし始めた2009年2月を皮切りに、「日本発のグローバルブランドのランキング」として「Japan’s Best Global Brands」を公表している(図1)。世界共通の物差しによるグローバルのリーディングブランドとの比較が目的であり、海外売上高比率が30%以上の日本発のブランドを対象としている。

図1 日本企業のブランド価値ランキング(2018年)
出所/インターブランドジャパン

2011年以降は、海外売上高比率が30%未満のブランドを対象とした「Japan’s Best Domestic Brands」として上位ブランドを評価・発表してきた。いずれも独自のブランド価値評価手法に基づくもので、詳細については後述したい。

ここでは、以上のようなブランドに関する評価を蓄積してきた立場から、大きく成長するブランドに共通する要素は何か。2つのブランドランキングから何が読みとれるか。その解の糸口として、それぞれのブランドが掲げる理念体系に着目してみたい。

成長ブランドの理念体系

図2は、縦軸に株価純資産倍率(PBR)、横軸にブランド価値をとり、直近のグローバルブランド価値ランキングにおける各ブランドの価値金額をプロット(対数表示)したものだ。多くのグローバル・リーディングブランドが右上方向に位置し、市場や社会からの「期待」の大きさを反映する状況となっているが、一方でグローバルランキング入りしているブランドを含め多くの日本ブランドは左下にとどまる。

図2 グローバル・リーディングブランドの市場からの「期待」

ブランドに対する市場や社会からの「期待」の根幹のひとつに、それぞれが掲げる理念などの中核概念があり、その明瞭さの違いが「期待」の差に表れている面があるのではないだろうか。

図2の右上に位置するランキング上位の主要ブランドにおける理念体系をみると、共通する傾向がある。これらのリーディング企業の理念体系は、きわめて簡潔明瞭な規定となっており、かつブランドの独自性やビジネスとの関連性が高い傾向にある。

例えば、GoogleのMissionは"To organize the world’s information and make it universally accessible and useful.(世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて、使えるようにすること)"を存在意義としており、このフレーズを耳にしたことがある方も多いと思う。

またFacebookは、"Give people the power to build community and bring the world closer together.(人々にコミュニティ構築の力を提供し、世界のつながりを密にする)"と2017年にMissionの変更を行っている。

「これまで人々につながるためのツールを提供すれば世界は自然と良くなっていくと考えていたが、社会はいまだに分断されており、単に世界をつなげるのではなくそのつながりをより強めるための努力が必要だ」(マーク・ザッカーバーグ)という意図である …

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